2019年5月30日、台湾南部屏東県で行われた第35回「漢光」軍事演習中、8インチ自走砲2門が発射された(Sam Yeh/AFP via Getty Images)

中国が台湾侵攻の計画を加速 3年以内に実行の可能性=専門家

中国政府が台湾に対する軍事演習を強化する中、専門家は中国共産党が台湾侵攻計画を加速させていると警告する。

台湾国防部によると、3月26日に20機の中国軍機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に入った。中国軍機には核兵器を搭載できるH-6K爆撃機4機、J-16戦闘機10機、Y-8対潜哨戒機2機、KJ-500空中早期警戒管制機などが含まれている。これは国防部がこれまでに報告した中で最大規模だった。

昨年1月に再選された台湾の蔡英文総統は、中国共産党の脅威に対して強硬な姿勢をとる一方、米国との協力を強化しており、中国の台湾に対する軍事行動はエスカレートしている。

昨年、中国空軍が台湾の防空識別圏に侵入した回数は約380回で、1996年以来最高を記録した。今年に入ってからも、中国軍機はほぼ毎日防空識別圏に侵入しており、台湾の東沙島付近では中国が無人偵察機を飛ばしている事も報告されている。

軍事行動と並行して、中国政府は台湾に対する脅迫発言を強めている。今年初め、中国の国防報道官は、台湾が独立を宣言すれば戦争をすると脅した。

現地メディアによると、3月29日、台湾の防空識別圏に中国機が進入し、台湾の迎撃機の操縦士が空域から「出て行け」と警告すると、中国機のパイロットは「これは全て我々のものだ」と言ったという。

侵攻の準備

米国防長官室のサイバーセキュリティ政策・戦略・国際問題担当の元ディレクター、ジョン・ミルズ(John Mills)氏は大紀元に対し、中国の動きは台湾侵攻に備えた一連の予行演習の一環だと述べた。

ミルズ氏は、今後2年以内に大規模な予行演習が行われると予測する。水陸両用上陸作戦の複雑さと、中国軍がこれまで敵地に強制上陸した経験がない事を考えると、こうした予行演習が必要だと彼は言う。

同氏は、3年以内に侵攻が起こる可能性があると考えている。

「もし彼らが10年以内に侵攻していなければ、習氏はおそらく職を解かれているだろう」とミルズ氏は述べた。また、習氏は経済危機などの国内問題から注意をそらすために、台湾を攻撃するよう圧力を受ける可能性があると付け加えた。

3月に行われた上院軍事委員会の人事承認の公聴会で、米インド太平洋司令部(INDOPACOM)司令官に指名されたジョン・アキリーノ米海軍大将は、中国による侵略の脅威は「ほとんどの人が考えているよりもはるかに近い」と述べた。

前国家安全保障顧問のH.R.マクマスター氏は3月、習氏は台湾を攻撃する「チャンスはつかの間であり、次第に失われている」と考えていると語った。マクマスター氏によると、北京冬季五輪の閉幕と重なる2022年以降は台湾にとって「最大の危機」になるという。

中国軍はまだ台湾を攻撃する準備ができていないとミルズ氏は言う。しかし、待てば待つほど台湾の態勢が整い、防備が強化されるため、「このタイムラインの加速を認識し、準備する必要がある」と彼は述べた。

ミルズ氏によると、中国政府の台湾への野心は主に台湾の半導体製造能力を獲得したいという願望から来ている。台湾には、世界最大のチップメーカーであるTSMCがある。

中国は、携帯電話からミサイルまであらゆるものに使われる半導体チップを外国に大きく依存している。ブルームバーグによると、中国は2020年に3800億ドルの半導体を輸入しており、これは同国の全輸入額の約18%に相当する。

トランプ政権が中国企業に課した一連の制裁措置を受け、中国政府は現在、半導体の確保に苦しんでいる。米国の制裁措置で中国の巨大IT企業ファーウェイのスマートフォン事業が麻痺し、中国の半導体メーカーSMICも米国の貿易ブラックリストに載せられた。

米国への反撃

台湾の中正大学(NCCU)戦略国際問題研究所の宋學文教授は大紀元に対して、中国政府の3月26日の防空識別圏侵入は、3月の米政府の動きへの反応だと述べた。

米政府は3月、クアッド(日米豪印)の首脳会談、「日米2+2」会談、そしてアラスカで米中会談を行った。

「この3つのイベントは、米中間には構造的な対立があり、外交交渉では解決できないことを示している」と彼は述べた。

宋教授によると、中国は米国が対立を強めていると見て、3月26日に台湾の防空識別圏に大型機中隊を派遣し、軍事力を誇示したという。

宋教授はまた、前日の3月25日に調印された米台沿岸警備協力協定も、中国による防空識別圏侵入の引き金となった可能性があると付け加えた。中国は、沿岸警備隊が必要に応じて外国船に発砲することを認める法律を1月に制定しており、今回の米台沿岸警備協力協定はそれに対する抵抗だと彼は述べた。

台湾の防衛

ミルズ氏は、中国の軍事的脅威が高まる中で、バイデン政権は中国共産党に対して明確な抑止政策をとるべきであり、具体的には台湾周辺、東シナ海、南シナ海に米海軍と空軍のプレゼンスを強めるべきだと述べた。

ミルズ氏によると、台湾の自衛能力を向上させることも重要であり、バイデン政権は台湾関係法に基づいて、台湾が要求する兵器を売却すべきだという。この法律の下では、米国は台湾の自衛に必要な武器を供給する義務がある。

また、米国防総省の2021年度予算案に基づいて創設された太平洋抑止構想(PDI)も、米軍がこの地域を防衛する上で不可欠だとミルズ氏は付け加えた。PDIは、インド太平洋地域における中国の軍事的脅威を抑止するための先進的な軍事能力を確保することを目的としている。

中国の侵攻を防ぐために、台湾は「武器が多ければ多いほどいい」とミルズ氏は述べた。そして、台湾が中国本土に到達可能な長距離ミサイルの生産を開始したことは「大きな出来事」だと付け加えた。

ミルズ氏によると、台湾の長距離ミサイル生産は、「台湾は中国本土に被害を与えられるという明確なメッセージ」を送っているという。

宋教授は、バイデン政権は台湾を支援する2つの方法があると示唆した。台湾の国際機関への参加の支援、そして「信頼できる産業同盟」への台湾の参加である。

また、トランプ前大統領が署名したいくつかの親台湾法案についても、バイデン政権は積極的に施行する可能性があると宋教授は述べた。これらの法律には、台湾旅行法、台北法、アジア再保証イニシアチブ法が含まれる。

第一列島線に位置する台湾は、アジアにおける中国の軍事侵略の最初の標的となるだろう。第一列島線は、九州、台湾、フィリピンからインドネシアまでの境界線である。中国共産党の軍事戦略担当者は数十年にわたり、第1列島線を中国の空・海軍の障壁と見なしてきた。そのせいで第2列島線は手の届かないところにある。

その結果、欧州とアジアの一部の国、特に日本とオーストラリアは、台湾と米国の協力が確実かどうかを見極めるため、台湾を注視していると宋教授は述べた。

「これらの国々は、米国政府がこれらの法律をどのように行使するか、あるいはただのリップサービスなのかを注視している」と宋教授は述べた。

バイデン政権は、台湾へのコミットメントは「磐石のように堅い」と述べている。しかし宋教授によると、バイデン氏自身が中国共産党の事を「脅威」だと言ったことがないことを考えると、バイデン政権が台湾防衛にどれほど真剣に取り組んでいるかはまだ分からないという。

バイデン氏は中国を米国の「最も深刻な競争相手」としている。

宋教授は、近い将来に米国と中国が、特に台湾が支配する南シナ海の2つの島(東沙島と太平島)を中心に、小規模な軍事衝突を起こすと予測している。

「米国と中国は新たな冷戦に突入していると思う」と宋教授は述べた。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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