少年先鋒隊の証として、赤いスカーフを付けて授業を受ける小学生。2020年9月、北京にて撮影(Photo by Kevin Frayer/Getty Images)

子どもに政治思想教育「特色ある社会主義」反政府感情の抑制を図る中国共産党

香港中国本土の小中学校を対象に、習近平中国主席の中国共産党政治思想に関する教育を促進する新たな指針が発表された。正式には「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」として知られている。

2018年に中国憲法に明記されたこの習主席の政治思想は、中国国営報道機関が最近、「習思想」または「習近平思想」と呼んで推進している。これは、自らを毛沢東初代国家主席と同列を望む、習主席が打ち出した政治思想の通称だ。

中国憲法に記載されている毛沢東思想は、1962~76年まで続いた中国の文化大革命の間に、軍や宣伝部門、また紅衛兵と呼ばれる学生運動によって精力的に推進された。アナリストらの見解によると、この新たな指針は、2019年3月から継続的に香港で発生したような反政府運動や民主化運動の取り締まりを目的とする政策の一環だ。

中国共産党中央委員会が発行した指針は、将来的な共産党員の育成を目的として、全国的な青少年組織である中国少年先鋒隊(少先隊)への政治思想教育を先鋭化する内容となっている。チャイナデイリー紙の報道で、習主席は「少先隊が1つの大きな学習機関として機能し、そこで隊員らは資質やあらゆる種類の技能だけでなく、共産党、祖国、国民に対する忠誠心を育む」と述べている。

1949年に設立した少先隊には、6~14歳までのほぼすべての中国人児童が所属しており、共産党への忠誠心を学んでいる。2021年2月上旬にブルームバーグ・ニュースが伝えたところでは、小学校および中学校の1年と2年生の児童・生徒は全員、週1回は習近平思想に基づき少先隊の活動を実践する授業を受けることになる。

香港教育局の楊潤雄局長が、物議を醸している国家安全維持法の違反を通報しなかった大学に、処罰を科す新たな措置を発表した。この際、同指針にも言及した。BBCニュースによると、香港で社会不安が発生した2019年に一部の学生が行った反共産党のスローガン提起や「人間の鎖」などの示威運動が発生した場合、香港の教授・教師や学生に事態を通報する責任を課す指令が発せられた。

権利活動家・黃曉敏氏がラジオ・フリー・アジア(RFA)に語った内容では、近年、少先隊は政治組織というよりも青少年クラブの様相を呈している。

黃氏はRFAに対して、「(政治組織としての)信頼性が低下した少先隊組織には、重要な仕事を任せられないという感が出てきた」とし、「今を逃せば、自国児童の政治教育を推進する場がなくなるという事実に、中国政府が突然気付いたものと思われる」と説明した。

CNNニュースの報道では、中国共産党の指揮の下、少先隊に属する低年齢層の児童は中国の歴史や文化を学び、年長児童は中国人民解放軍(PLA)などの国家機関の重要性を教え込まれる。

2019年の騒乱の真っ只中、香港の林鄭月娥行政長官がCNNニュースに語ったところでは、親中派の政府は、香港若年層の間で「急進化」と反共産党思想の広がりは、自由な教育カリキュラムや教師の姿勢のせいだと考えている。

匿名を条件としてCNNニュースの取材に応じた某側近は、「根本的な問題は、若年世代が真っ向から中国の体制に反対しているだけでなく、実際に中国という国を憎悪していることだ」とし、「世代全体が中国を憎悪するという状態では、『一国二制度』は成り立たない」と話した。

中国本土の一部の住民やアナリストらは、今回の思想教育強化措置を中国共産党への異議と抗議の増加抑制対策の一環であると考えており、中国共産党は中共ウイルス(新型コロナウイルス)のパンデミックなど重要な問題により焦点を当てるべきだと述べた。

王という苗字だけを名乗った中国山西省北部の太原市の某住人は、RFAに対して「現在、国の人口14億人が世界諸国と同じパンデミックという問題に直面しているというのに、政治思想教育のほうに目を向けるなどあり得ない」とし、「自分に学齢児童がいたとしても、少先隊には絶対入隊させない」と述べた。

(Indo-Pacific Defense Forum)

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