人質外交を批判する宣言 日本や米豪英など58カ国署名 カナダが呼びかけ
カナダ政府は2月15日、「国家間の恣意的拘禁に反対する宣言」を発表した。これは、外交手段として外国人を逮捕し人質にすることを非難したもので、名指しではないが中国を念頭に置いている。ドイツ、イギリス、米国、日本、オーストラリア、EUなどの同盟国や友好国58カ国が署名している。
声明によれば、恣意的な拘禁は「世界経済の根幹をなす旅行や貿易さえもリスクにさらす」としている。カナダのマルク・ガルノー外相は15日、こうした拘禁を行う国に対して「容認できない行為であると圧力をかけ、結果を伴うということを伝える」と述べた。
「対象者を家族から引き離して、さらに交渉材料に使うのは違法であり非道徳的だ」と、ガルノー外相はロイター通信の電話取材で述べた。
アントニー・ブリンケン米国務長官は同日にコメントを発表し、「人間は交渉の切り札ではない」と宣言内容の支持を表明した。英ドミニク・ラーブ外相もまた「世界中の国々が協力して、外国人や二重国籍者の恣意的な拘禁に対抗しなければならない」と語るメッセージ動画を公表した。
中国共産党政権は、この58カ国による人質外交を批判する宣言に激しく反発した。党機関紙の環球時報は15日、「中国を挑発するために設計された攻撃的で無策な宣言だ」と専門家の話を引用して報じた。オタワの中国大使館は、宣言は「偽善的で卑劣」と非難した。
中国の検察当局は2020年6月、この1年半前に拘束したカナダの元外交官マイケル・コブリグ氏と、企業家マイケル・スパバ氏を「スパイ罪」などで起訴したと発表した。カナダ当局が米国に協力して、イラン制裁違反容疑で中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)幹部の孟晩舟氏を拘束し、米国への身柄引き渡しの裁判を行なっていることに対する、中国当局の報復行為だとの見方がある。
カナダ外相は2020年11月、中国のような権威主義国家による「人質外交」には多国間行動で対応しようと、志を共にする民主主義国に呼びかけていた。今回の宣言は、これが具現化した。報道によれば、恣意的拘束を批判する国際的な共同宣言が採択されたことは初めて。
(佐渡道世)