2008年3月7日、中国重慶市の刑務所で裁縫作業をする被収容者たち。参考写真。 (China Photos/Getty Images)

「動物のように働かされた」中国の巨大な刑務所労働システムの内部

李殿奇さんは、中国の刑務所で3年間断続的に1日約17時間働き、ブラジャーからズボンまで、さまざまな安価な衣服を作ってきた。彼女は無給で働き、ノルマを達成できなければ看守の処罰を受けた。

あるとき、ノルマを達成できなかった約60人の労働者のチームが、3日間連続で働かされ、食事もトイレも許されなかった。看守たちは労働者が眠りに落ちそうになると電気警棒でショックを与えた。

李さんは、遼寧省瀋陽市にある遼寧女子刑務所を「人間が住む場所ではありません」と表現した。

「彼らに逮捕されると働かされます。豚の餌にも及ばない物を食べ、家畜のように働かされます」と李さんは話した。

現在69歳でニューヨーク在住の李さんは、法輪功という精神的修行への信仰を捨てることを拒んだため、2007~10年まで遼寧女子刑務所に投獄された。中国政府の公式の推定による法輪功の修煉者が約1億人に急増した後、中国政府は1999年以来、法輪功に対する大規模な迫害を続けている。

刑務所では衣料品のほか、造花から化粧品、ハロウィーンのおもちゃまで、さまざまな輸出品が作られていた。

李さんは、グローバル・サプライチェーンで流通する安価な製品を作り続ける中国の巨大な刑務所労働機械の小さな歯車にすぎない。

米国税関当局はここ数カ月間、中国の刑務所労働による輸入品を厳しく取り締まっており、中国政府の強制労働は新たな注目を集めている。2019年9月以来、米国税関国境警備局(CBP)は中国企業4社に対して、製品が米国に輸入されることを禁止した。

CBPは6月、新疆ウイグル自治区から輸入された13トンの毛髪を押収したと報じた。中国共産党による弾圧の一環として強制労働を強いられているウイグル族や、その他のイスラム系少数民族に関心が寄せられた。また、国際的な衣料ブランドに対し、新疆の工場との関係を断ち切るよう求める圧力が高まっている。特に3月、強制労働を示唆する状況下で、数万人のウイグル族が中国全土の工場で働くために移送されたことが調査で明らかになった。これらの施設は83の世界的ブランド製品を製造している。

元米外交官で現在は国際法律事務所のハリス・ブリッケンに勤務しているフレッド・ロカフォート氏は、刑務所と強制労働は「中国のサプライチェーンに浸透している」と話す。同氏は、中国で商業弁護士として10年以上働いており、100件以上の工場監査を実施し、同氏が代表する外国ブランドの知的財産が保護されているかを調査し、場合によっては強制労働が行われているかどうかを確認した。

「これは、現在の新疆における人権危機よりもずっと以前から存在している問題です」とロカフォート氏は言う。

同氏によると、外国企業は中国の供給業者に製造を委託することが多く、そして供給業者は刑務所労働者を雇用している企業、または直接刑務所と契約を結ぶという。

「中国の刑務所の所長であれば労働力を利用できますし、中国の供給業者に非常に競争力のある価格を提供できます」とロカフォート氏は言う。

同氏によると、外資系企業はこれまで、中国のサプライチェーンを精査して強制労働を取り締まることにあまり力を入れてこなかったが、ここ数年は意識が高まり、ある程度の進展がみられるという。とはいえ、国際的な企業は、サプライヤーや、さらにそのサプライヤーの労働環境に関する正確な情報を入手する上で、かなりのハードルに直面している。「サプライチェーン全体に透明性が欠けています」と同氏は述べた。

刑務所ビジネス

李さんによると、遼寧女子刑務所は多くの作業単位に分割され、それぞれが数百人の受刑者で構成されているという。李さんは第10作業単位に入れられ、毎日午前7時~午後9時まで衣類を作らされた。その後、1人当たり10~15本の造花の茎を作らなければならなかった。李さんは通常、真夜中を過ぎるまで作業が終わらなかった。遅い人、特に高齢者は、作業を終えるために徹夜することもあったと言う。

「中国の刑務所は地獄のようです」と彼女は言う。「個人的な自由は全くありません」

李さんは、韓国向けの化粧品を製造していた別の作業で発生するひどい臭いを今でも覚えている。製造現場に充満した焦げた臭いとほこりで労働者たちは息切れしていたが、看守に話すことはできなかった。話せば彼らは殴られるだろうと李さんは話す。

ある時、看守たちの会話を耳にした際、刑務所は一人当たり年間約1万元 (約15万4500円) の価格で省司法当局から受刑者を「レンタル」していることを知った。

所長は、刑務所全体で開かれた会議で「刑務所を成長し拡大させる」ために、「一生懸命働く」よう皆に呼びかけた。

また、刑務所では輸出用のハロウィーンのお化け飾りも作り、トラックいっぱいの製品が次々と刑務所から運び出された。李さんは鉄線で幽霊に黒い布を付ける作業をしていた。彼女はその後、ハロウィーンの頃にニューヨークを歩いていると、アパートのドアに同じような装飾が施されているのを見たと言う。

長年の間、欧米の顧客が買った製品の中から、中国の刑務所労働者が書いたとされる隠されたメモが発見され、中国の労働搾取に世間の注目が集まっている。2019年、英国のスーパーマーケット大手のテスコは、「これは強制労働の被害者である受刑者によって包装されている」と書かれたメッセージがカードの中にあるのを顧客が発見したことを受けて、中国のクリスマスカード販売業者を営業停止にした。

2012年には、オレゴン州の女性がKmartで購入したハロウィーン装飾キットの中から、手書きの手紙を発見した。手紙は中国北部の瀋陽にある悪名高い馬三家労働教養所に収容された男性が、同施設で拷問や迫害を受けたことを伝えるものだった。手紙を書いた人物は法輪功修煉者の孫毅(スン・イ)さんで、2008年に収容所で2年半の強制労働の判決を受けており、制作と包装を強制されたハロウィーンの装飾品の中に多くの手紙を隠していた。

2000年、瀋陽出身の李さん自身も馬三家労働教養所に収容され、朝から晩までプラスチック製の花を作り続けた。

完成した花は「とても綺麗」だったが、作る過程は拷問だったと李さんは言う。受刑者たちには、空気中に充満したプラスチック粒子による有毒な霧から身を守る手袋やマスクは与えられなかった。しかし看守は全員マスクをつけていた。

労働者たちはトイレに行く以外は休憩を許されず、トイレに行くには看守の署名が必要だった。衛生基準は存在しなかった。

「手を洗うことは許されませんでした。より多くの仕事をすることが一番大事でした」と李さんは語った。

何度も馬三家労働教養所に拘禁され、現在は米国に住む法輪功修煉者の于溟(ユ・ミン)さんは昨年、収容所からこっそり持ち出した隠し撮り映像を公開した。2008年のこの映像には国際市場向けのダイオードや小型電子部品を作る受刑者たちが映っていた。

巨大なネットワーク

米国に本拠を置く非営利団体、「法輪功迫害追跡調査国際組織」の汪志遠代表は、中国の刑務所労働産業は、政府の司法制度の監督下にある拡大し続ける経済マシーンだと述べた。

同氏は、中国政権が利用できるこの報告されることのない労働力は、中国の世界経済への野心を前進させるための「強力な戦略兵器」であると述べた。

「米国が中国にいくら関税を課しても、中国共産党の奴隷労働産業は大きな影響を受けないだろう」と汪氏は言う。

2019年に同団体が発表した報告書によると、681の会社が30の省と地域で刑務所労働を利用しており、人形からセーターまで、さまざまな製品を作って海外に販売していた。それらの企業の多くは国有企業で、中には中国軍の管理下にある企業もあった。また、全体の約2/3にあたる432の刑務所企業の法定代理人は、その地方の刑務所行政機関のトップであることがわかった。

中国政府は2013年に強制労働収容所制度を公式に廃止したが、報告書の調査結果は強制労働産業が依然として健在であることを示唆している。

労働収容所はただ名前を変えて、刑務所制度に統合されただけであり、「同じ薬を違ったスープで提供している」と汪氏は話した。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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