中国、「露店経済」ブームに急ブレーキ 党内分裂が顕在化

中共ウイルス(新型コロナウイルス)による経済への打撃が深刻化する中、これまでに取り締まり対象だった露店が一転して景気刺激策として打ち出された。しかし、李克強首相が推奨するこの「露店経済」に対して、各地方政府が「拒否声明」を出すという異例な事態となった。

李克強首相は6月1日、山東省煙台市を視察した際、「露店経済や小売店経済が重要な雇用の源で、『人間煙火(庶民の暮らし)』であり、ハイエンド業種と同様に、中国経済の活力だ」と位置づけた。中国のメディアは直ちに、勢いよく押し寄せ、露店経済の発展を煽り立て始めた。

しかし、わずか1週間で政治の風向きが一変した。北京市政府は6日、「首都のイメージを損なう」と糾弾した。そして、北京市の「城市管理行政執法局(城管)」は、露店商や路上取引などの「違法行為」への取り締まりを強化すると発表した。北京市のトップ蔡奇・党委書記は習近平主席の側近とみなされている。

「北京日報」は

7日、李克強氏の露店経済を完全否定する記事を掲載し、「露店経済は首都・北京のイメージや中国のイメージを損なうもので、質の高い経済発展には有害だ」と主張した。

共産党中央宣伝部は4日、メディア各社に「露店経済」への箝口令を敷いて、ネット上の言及をすべて削除することを求めた。中央宣伝部(中国共産党イデオロギー・宣伝部門)のトップ王滬寧氏は、政治局常務委員会(トップ7)の中で習近平派の最も中心的なメンバーとされている。

国営中央テレビ(CCTV)は7日、「露店経済、がむしゃらにやってはいけない」と題した社説で、がむしゃらにやりだすと、長年の都市建設の成果が台無しになってしまうと指摘した。露店経済に急ブレーキをかけた。

その後、各メディアは論調を一変させ、露店経済への批判を始めた。1週間あまりで政策が変更され、現場が混乱した。ネット上では、スイカ販売の露店商が治安要員から暴力を受ける動画が拡散されている。移動販売車の事業を手掛ける五菱汽車集団の株価は6月3日、3倍以上高騰したが、9日までの下落率は30%強。

露店経済めぐる習・李両氏の争い

李克強首相は中国経済の現状を憂慮している。李氏は5月28日、全国人民代表大会(全人代=国会)閉会後の記者会見で、「月収千元(約1万5千円)の中国国民は6億人いる」とし、「今年は雇用問題が最重要課題」との考えを示し、対応策として露店経済を推し進めようとしている。

6月1日付、共産党理論誌「求是」は、昨年4月に習主席が行った演説を掲載。この中で習氏は「今年は『小康社会((ややゆとりのある社会))』の全面的実現という目標はほぼ達成された。しかも、その成果は当初の予想を上回るものである」とし、「少々足りないところがあるが、それを補うための取り組みを加速させなければならない」と述べた。これは李氏の発言に対して全面的に反論する内容だった。

李克強首相の露店経済が習近平派の抵抗に遭遇したのは、北京上層部の意見が分かれていることを示していると複数の海外メディアが報じた。李氏は記者会見で、不覚にも中国の貧困の実態を暴き、「貧困脱却や全面的な小康社会」という習氏の夢を打ち砕いた。歩調が合わない習・李両氏の対立が浮き彫りになったという。

時事評論家の劉鋭紹氏は6日、香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」の取材に対し、露店経済が急に中止されたのは、習・李の争いによるものであると指摘した。景気対策においては、両者の意見が対立している。習氏は一刻も早く経済生産活動を再開しようとしている。李氏は国民の生活と雇用を守ることに重きを置いているという。

政治評論家で清華大学元講師の呉強氏はアップルデイリーの電話インタビューで「経済政策策定を主導する李氏は就任後、経済の活性化や行政の手続き簡素化、市場開放などに注力していたが、習氏は経済政策への介入と制御を強めていた」「両氏は、過去8年間にわたって対立を続けてきた。ついに露店経済で爆発した」と語った。

一方で、中国当局は露店経済を完全に否定するのではなく、雇用創出策として一役買っているという認識を持っているとの分析もある。露店経済について現在、北京、上海、広州、深センの4つの一線都市は支持しないことが明らかになった。二線都市の大連は最初、支持していたが、直後に中止にした。理由は、ゴミの散乱や、店舗が指定場所をはみ出し交通への妨害が深刻だとした。

中国政府の発表では、今年の2~4月の失業率は約6%だった。 しかし、CTS証券のチーフエコノミスト、李迅雷氏のチームは4月、実際の失業率は20%で、新規失業率は七千万人を超えていると報告した。

(翻訳編集・王君宜)

 

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