フィンランド公共放送、「中国大使館は中国系市民を監視」
フィンランド国営放送「YLE」はこのほど、中国当局による中国系住民への監視と嫌がらせについて報道した。フィンランド安全保障・諜報庁(Supo)は、外国出身者のスパイ活動は以前からあると指摘した。
4月22日、YLEの放送は法輪功の学習者である金昭宇さんの話を取り上げた。金さんは、中国当局と駐フィンランド大使館から指示されたスパイから監視と嫌がらせを受けていると訴えた。
金昭宇さんは2008年、夫とともにフィンランドに移住した。中国国内にいる金さんの母親と妹は、同じく法輪功を修煉しているために、当局に迫害されていた。妹はその後、マレーシアに逃れ、タイなどを経由しフィンランドに亡命した。姉妹は数年間、フィンランド政府やメディア、人権団体に支援を求める活動を行った。その後、中国当局に7年間以上拘禁された母親もフィンランドに亡命できた。
金さんが支援を求める活動を行った際、他の中国系住民から中傷や嫌がらせを受けたという。金さんはフィンランド北部のロバニエミ市で旅行会社を経営している。地元には、ほかにも同じ観光業務を展開する中国系企業がある。中に、アークティック・チャイナ(Arctic China Oy、北極中国股份有限公司)という会社がある。
アークティック・チャイナの社員は金さんの会社を利用しないよう顧客を脅しており、それを知った金さんはロバニエミ市警察に通報した。
アークティック・チャイナの幹部はYLEの電話取材に、同社員について「知らない」と答え、電話を一方的に切ったという。YLEは、アークティックの同幹部は中国大使館と深いつながりがあり、中国大使館のロバニエミ市における連絡担当者でもあると指摘した。
金さんは、嫌がらせを受けた原因について、「法輪功の学習者だから」と話した。
YLEは香港人留学生のSheung Yiuさんにもインタビューした。
香港市民は昨年、犯罪容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐって、大規模な抗議活動を行っていた。Yiuさんは、フィンランドで香港市民を支援する集会を主催した。中国共産党関連団体からの妨害を防ぐため、Yiuさんらは、集会計画や開催日についての情報を慎重に扱い、開催する数日前にフェイスブックで公開した。
しかし、集会は予想通りの効果を得られなかった。中国共産党中央統一戦線部に所属する「フィンランド・中国平和統一促進会」のメンバーが、集会の近くで妨害活動を行ったためだ。同組織は、Yiuさんらのフェイスブックなどを見張っていたという。Yiuさんは、中国人スパイとみられる人物から電子メールを受け取ったことがあると語った。
YLEは金さんとYiuさんの事例から、「中国当局はフィンランドで影響力を行使している」と警告した。Supoは、「難民に対するスパイ行為は前からみられた。対象の多くはその国の反体制派だ」とした。
フィンランドでは現在、スパイ行為を刑事犯罪として罰則する法律がない。スウェーデンやノルウェーなど他の北欧諸国は、個人情報の収集を違法行為として処罰を科している。
(翻訳編集・張哲)