昔、斎(せい)という国に、一人の桑つみ女がいました。彼女の首には生まれつきの大きな瘤(こぶ)がありました。そのため、人々は彼女を宿瘤(しゅくりゅう)と呼んでいました。
ある時、宿瘤が桑をつんでいると、たまたま王様の一行が通りました。多くの人々が王様を一目見ようと走りましたが、宿瘤だけは脇目もふらず、桑をつみ続けていました。
不思議に思った王は宿瘤を呼び、その理由を問いました。
宿瘤は言いました。「父母より、桑を取れと言いつけられましたが、大王を拝せよとは言われていません」
王は甚だ感心して言いました。「汝は実に変わっている。えりに瘤があるのは誠に惜しいのだが」
宿瘤は、「人は心を第一とするので、瘤があっても何も嘆くに及びません」と言いました。
王は再び感心し、誠に賢い者とみなし、彼女を宮中に召すことにしました。
宮中の女たちは宿瘤が来ることを聞き、衣服を着飾って待ち受けました。一方、宿瘤は衣服が粗末で、えりに瘤があるため、非常に醜い外見でした。皆は口を押さえて笑いました。
王は皆の笑いを制し、やがて宿瘤を妃にしました。
その後、王は妃のいさめをよく聞き、宮中の浪費を減じ、それを持って下の者に恵みました。国はますます富み栄え、民はよく治まり、斎国は強国となりました。
参考:明治二十年尋常小学校読本
(大紀元日本ウェブ編集部)
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