昔、近江国にお坊さんがいて名を賴真と言い、9歳の時、金勝寺に入りました。彼は記憶力に優れていて、僧の経を読誦するのを聞くと、すぐ覚えるようになりました。
賴真は毎日経を読誦し続けて、だんだんと知恵のある有識な長者となりました。しかし、彼の話す時の様子はいつも他の人と違って、まるで牛のようで、口は歪み、顔も少し傾きました。賴真はこんな自分がとても恥ずかしいと思い、嘆きました。
「わしは前生の悪業のせいで今それに報われるのか。今世にこれを懺悔せずば、また後世を恐るべし」
賴真は比叡山の根本中堂に参り、七日七夜籠しました。六日目の夜、夢に貴い僧が出てきて告げました。「あなたの前世は鼻のない牛で、近江の国依智の郡の官首の家で養われていた。ある日、官首は8部の仏経を牛に背負わせ、お寺に運ばせた。牛はそれを無事にやり遂げた。お前は仏経を背負い運んだゆえ、今世は人と生まれて、仏法を修めることができた。ただし、前世の罪がまだ全部償われていないので、口がまだ牛の形で残っているのだ。努力して修行し続けるときっと人の生死の輪廻から抜け出せるのじゃ」
賴真は目を覚ますと、感慨無量となり、もっと精を出して仏法を修めるようになりました。彼は70歳の際まで生きましたが、臨終の際.何の苦痛もなくこの世を去りました。
参考資料:虎関師錬 (著) 『元亨釈書』/景戒 (著)『日本国現報善悪霊異記』
(大紀元日本ウェブ編集部)
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