張晋は明の時代の人で、富貴な家の娘である劉さんを嫁に貰った。張晋の母親は、非常に専横で底意地の悪い人だったので、張家の上三人の息子の嫁はみなこれに我慢できず家を出て行った。ところが、四男の嫁として嫁いできた劉さんは、あにはからんや、この底意地の悪い姑にとても気に入られた。
多くの人がこれをいぶかしがった。なぜ姑が劉さんを受け入れたのだろうか?劉さんに尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「『従順』の二文字に尽きます。姑の説教と指示には全て従います。たとえ、礼儀に合わないことや女性がすべきではないことであっても、姑がするように言ったなら、その場で断ることはせず、後で機会を見つけて懇ろに姑に事の是非を説明するようにしました。説明するとき、冷静に落ち着いて穏やかであれば、往々にして、姑は私の話を聞いてくれました」。
劉さんがこのようにして姑に三年仕えるうちに、姑はなんと慈愛深くなった。その後張家では、たて続けに三人の息子が嫁を貰ったが、それ以来、姑による嫁いびりは起こらなくなったのである。
人と人の間では、私にひどいことをすれば、私もあなたにひどいことをしてやる、ということが行われる。悪をもって悪を制し、恨みをもって恨みを制し、お互いに傷つけあうのだが、それではトラブルをいっそう深刻なものとし、怨恨を生むだけで、なんら根本的な解決には至らない。トラブルに遭遇したら、相手が正しいか否かにかかわらず、まず自分から先に進んで一歩退く。
その後、気を落ち着けて、温和で善良な心で問題をきちんと説明する。「善の心」と「善のことば」の前では、どんなに道理をわきまえない人であっても、それ以上ひどい態度に出ることはないし、どんなに大きな矛盾も融けて和解できるものである。「忍」と「善」の力がどんなに大きいかということを忘れてはならない。
(編集・望月 凛)
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