「魔法の武器」NZの大学教授が報告書 中国共産党の統一戦線に警鐘
ニュージーランドの中国問題専門家、カンタベリー大学のアン・マリエ・ブレイディー教授の自宅に2月14日、何者かが侵入し、パソコンなどの物品が盗まれる事件があった。昨年12月に同教授の大学構内にある研究室にも同様の盗難事件が起きた。
同教授は昨年9月、米ワシントンDCで開催された学会で中国の浸透工作をまとめた研究報告「魔法の武器」(Magic Weapon)を発表した。ほかの貴重品が盗まれていないことから、同国のメディアは侵入事件が研究報告と関連があると分析している。
今年2月、同教授に届いた差出人不明の手紙では、これまで共産党に従わなかった者が受けた仕打ちを細かく記述したうえ、同教授が「次の報復対象だ」と書かれていた。昨年12月、中国にいる協力者が国家安全部門に尋問を受けた。同教授は一連の出来事が中国共産党による報復だとの認識を示している。
ブレイディー教授は20年来、中国共産党の宣伝活動、メディアに対する統制、外交政策、北極と南極における政策など広範囲に中国問題について研究を重ねてきた。
「魔法の武器」と題する研究報告書では、中国共産党が「統一戦線」という武器を利用して、いかにニュージーランドに浸透してきたかについて論じている。
その具体的な手段について「中国資本を先頭に、ソフトパワーの輸出や”全方位、多レベル、広範囲"の対外宣伝工作を通じて、西側諸国の政治、経済、社会に対して浸透を図る」と記述し、「海外での政治的影響力を強めるため、買収と脅迫を織り交ぜた協力者を獲得する」と指摘する。
同教授は報告書で、「中国は党国体制のもとで、独自の手段で外交関係を進めてきている。統一戦線はその外交政策の核心を成している。当初、政権奪取に大いに役立った統一戦線は今、全世界で覇権を広め、影響力を強める魔法の武器となった」と統一戦線の危険性を論じた。
統一戦線は「大本営」の中央統一戦線部のほか、中央宣伝部、在外華僑華人連合会、各種の友好協会(日本の場合、日中友好協会がこれに当たる)が部門の垣根を越えて連携を取りながら実現されているという。
同研究報告書は数十種類に及ぶ共産党の浸透の手段をまとめた。その主な手段として
ー海外で生活する中国の移民や留学生に影響力を及ぼす(現在、海外に6000万人の中国人がおり、そのうちの1000万人が中国国籍を保有している)
ー現地の中国語メディアをコントロール下に収め、共産党理念に異議を唱える中国語メディアを追い出す
ー共産党の理念に賛同する現地の中国人の政界入りを後押しする。議員に当選後、共産党に有利な方向に働きかけてもらう。
ー政治の中枢と接触できる前職の国会議員など有名人を中国企業または現地の中国系企業の要職に就かせる。
などが挙げられた。
報告書では唯一、中国共産党の影響を受けていない現地の中国語メディアは大紀元時報だと述べられた。また、各大学に設置されている学友会は中国大使館から資金提供を受け、留学生や国内から派遣された研究者が「共産党にとって厄介な存在にならないように」監視する役割を働いている。監視対象が国内情勢とともに変化すると教授は指摘した。1989年の天安門事件以降、監視対象をこれまでの民主運動活動家から法輪功学習者、台湾支持者などに広げた。
ニュージーランドでは昨年、中国系の国会議員楊健氏がかつて中国軍所管の大学でスパイ養成業務に従事していたことを隠した事実が明るみに出て、大きな波紋を呼んだ。同氏は国会議員に当選後、ニュージーランドの対中関係を積極的に進めてきた。
現在、同国の国家安全部門が同教授の自宅などに起きた不法侵入事件の調査に乗り出している。ジャシンダ・アーダーン首相は「証拠が見つかり次第、対応を検討する」と表明した。
(翻訳編集・李沐恩)