ザッカーバーグ氏が訪中、FBの解禁求めこの手あの手
人体に有害な高濃度スモッグに覆われた天安門広場前をマスクもなしにジョギングし、習近平氏の著書を読むよう自身の会社従業員に勧め、愛娘の誕生には習氏に名付けを求めるー。これは熱心な中国共産党員の話ではない。米フェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)の話だ。
フェイスブックは中国で検閲されているため、利用することはできない。しかし、ザッカーバーグ氏については国営メディアは取り上げることがあり、愛嬌あるキャラクターで中国でも知名度は高い。「お探しのサイトは見つかりません、の創業者(founder of 404 not found)」とのあだ名もある。
ザッカーバーグ氏の共産党寄りの一連の動きは、中国でのフェイスブック解禁に向けたアプローチと考えられている。
中国共産党新指導部が発表されてから5日しか経っていない北京に、ザッカーバーグ氏の姿があった。新華社通信によると10月30日、北京の清華大学経済管理学院(ビジネススクール)顧問委員会の年次会合に、海外委員としてアップルのティム・クックCEO、大手投資ファンドのブラックストーン・グループのステファン・シュワルツマンCEOらと並んで出席した。今年は新メンバーとしてDell Computerのマイケル・デルCEO、ソフトバンクの孫正義CEOも加わった。
ブルームバーグによると、この会合には習近平国家主席も出ており、中国で事業を行う外国資本に対する規制緩和をほのめかす発言をした。第19回党大会報告には、さらなる経済開放政策で、グローバリゼーションに貢献すると繰り返した。
いっぽう、習近平氏と直接言葉を交すザッカーバーグ氏からの積極的なアピールにもかかわらず、2009年以来、中国当局はフェイスブックを解禁したことはない。習近平氏は同会合のスピーチで、外国の起業家たちに対して「売買不成立仁義在(取引が不成立でも関係性はそのまま)」ということわざを用いて、外国資本規制に対する理解を求めた。これについて「これはザッカーバーグ氏にぴったりの言葉だ」と英字メディア・クォーツは皮肉った。
フェイスブックが中国参入するためには、共産党政権が設定する監視と検閲に同意し、プライバシーポリシーも改変した「中国版フェイスブック」を作成する必要がある。
党大会前から、中国のネット管理部門「国家インターネット情報弁公室」や公安当局は、実名制導入やVPN規制など、ネット情報統制の強化策を相次ぎ打ち出している。党大会終了後の10月27日にも、ネット弁公室は、新たにSNS運営企業へ厳しい情報監視を要求した。
ザッカーバーグ氏はフェイスブックで、訪問先の清華大学での学生との交流についてコメントしている。「(年次会合出席にともなう)毎度の中国出張で、中国の革新的なイノベーション精神に遅れないよう追いつく」「彼らの最先端技術をシェアしてもらい、私はどのように起業するかをアドバイスした」。
すでに複数の米情報大手企業は、中国でビジネス展開するために、共産党の検閲に協力している。たとえば、アップルは60以上のVPNアプリを中国のアプリストアから取り下げた。アマゾンの中国代行業者は、同社クラウドサービスを利用するユーザーに対し、禁止されたVPNアプリを使用する場合はアマゾンのサービスを利用できなくなると警告した。
習近平氏は、清華大学での会合で、11月に北京で米トランプ大統領に会えることを楽しみにしていると述べた。両首脳は、貿易問題や北朝鮮問題について話し合うことが予想されている。
(翻訳編集・佐渡道世)