2016年3月14日、北京の人民大会堂で開かれた中国共産党第十一届中央委員会第三次全体会議の閉幕式で、演奏するブラスバンドを撮影するカメラマン (WANG ZHAO/AFP/Getty Images)

「ニュースは酒の肴にしかならない」挫折する中国ジャーナリストの本音

中国のネットで2月、ジャーナリストの心境を吐露した文章が出回った。作成者は、自称元メディア関係者で匿名の微博ユーザによるもの。中国全体に広がる嘘と欺瞞のなかで生き抜こうとしたジャーナリストたちの本音が、生々しくつづられている。

作者は微博ネーム「youyouluming99」、下記はその抄訳。


某所で、元メディア関係者20人の会合があった。元ベテランのジャーナリストの話に、皆がうなずいていた。

「どんなに骨を折って働いても感謝されない。人に損を与え、自分の利にさえならない。これが(中国の)ジャーナリストだ」。

なかには中国に大きな影響をもたらす報道機関に所属していた人、国際的に高い評価を得た人もいる。いずれも、人々の生活に影響を与えた。

何年も前、上海の新聞社が北京の大企業の不正をスクープした。狙われた企業の代表は、騒動を鎮めるために3つの話を出してきたという。「1.どれくらい金が欲しいのか 2.上海の同業者が画策したことだ、その企業を調査しようか 3.政治的背景のある誰かに指示されたのか?(その名前を暴露しろ)」。

そのスクープには、実際どんな裏取引もなかった。メディアは大企業の不正を暴いた。スクープした上海の新聞社の編集長は「それが私たちのすべきことじゃないのか?」と吐露した。

北京の大企業は、その新聞社にあらゆる嫌がらせをした。編集長への殺害予告は何度となくあったという。

編集長は、こうした圧力を「馬鹿馬鹿しい」と思っていた。その後、別の報道機関に不正をスクープされたある『お金持ち』が来て、この編集長に「何のために暴露なんてするのか?」と報道自体に疑問を投げかけた。

編集長は「事実はそこにある。記者はただ報道しただけだ」と言い放ってやったという。例えば、もし登山家に「どうして山に登るのか」と聞けば、「そこに山があるから」と答えるのと同じだ。

地位と富は確かに人を幸福にさせる。しかし、それだけが幸福の源ならば、人生は何て味気なく、寂しく、表面的なものだろうか。ロシアの作家ソルジェニツィンは、「真実を話すことは、全世界の重さよりも重い」と言った。

真実は美しい。何十年も、万年筆の先を修理し続ける北京の老人。機械化に頼らないスタイルを貫く福建省の古い農家。何世代にもわたり、ただ一品種の桃を栽培してきた日本の家族。これらに私たちは真実を見出す。

最近はますますメディアが増えている。24時間体制で情報を収集し、報じている。しかし「本当のニュース」は非常に少ない。独立した意見と知識はますます少なくなった。…見渡せば、すぐに砕けてしまうような泡ばかり。

私を含めて集まった20人の元メディア関係者は、かつては報道の最前線にいた。 情熱を持ち報道するために、危険を冒したこともある。

いまや誰もニュースに関わっていない。養豚、金融業、家具売り、映画監督、移民人材派遣、本屋、公共事業…。望んでニュースから離れた訳ではない。ただ、諦めなければならなかったのだ。

「骨を折っても感謝されない。人に損を与え、自分の利にさえならない。これが(中国の)メディア人だ」。

ここでのニュースはただ、酒の肴にしかならなかった。

(翻訳編集・佐渡 道世)

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