妃になった農家の娘 そのわけは?
古人曰く、「妻とするものは賢・徳を重んじる」。古代中国では、品があり、賢くて徳を備えた女性が家を平和にし、子女を健全に育てるといわれていました。今回ご紹介するのは、綺麗な衣装を身につけることのできなかった貧しい農家の娘の物語。彼女は生まれ持った徳と知恵で妃に変身したのです。
**************
昔、ある国に若い国王がいた。彼は賢い妃を求めて、候補者の女性たちに試験を行うことにした。試験当日、大勢の大臣や金持ちらの令嬢が試験場に現れた。その中に、一人の農家の娘がいた。
国王は最初の出題で早速、令嬢たちを困らせた。「日出と日没の間の距離はどの位あるのか」。その距離を測れる者など果たしているのだろうかと、人々は口々に言った。農家の娘は平然とした態度で「ちょうど一日の距離です」と答えた。国王は「実に素晴らしい答えだ」と褒めた。
次の問題は、「天と地の間の距離はどの位あるのか」。この時、大臣の令嬢は急いで、「天地の距離は9万里だと思います」と答えた。一方、金持ちの令嬢は「三蔵法師はお経を求めて、十万八千里を渡りました。この距離が天地の距離です」と答えた。しかし、国王はこれらの回答に満足せず、首を横に振った。
農家の娘はまたもや悠々と答えた。「ちょうど目を開いてから目を閉じるまでの間が天地の距離です」。国王は自分の膝を叩き「そうだそうだ」と喜んだ。令嬢たちは、農家の娘が次々と正解を言うので焦った。
そして、三つ目の問題が出された。「真実の話と嘘の話の間の距離はどの位あるのか」。これには、誰もが首を傾げた。真実の話と嘘の話の間に距離などがあるのだろうか。農家の娘は躊躇することなく、「話を聞く両耳の間がその距離です。片方の耳で一方的な話を聞くと往往にして偽りの話が多いのですが、両耳で両方から異なる意見を聞けば、真実の話が耳に入ってくるのです」と回答した。
喜んだ国王は農家の娘を賞賛し、妃として迎えることに決めた。しかし、皇后は農家出身の娘を見下し、婚約を阻止しようとして、三つの難題を出した。それは、1. この世で最も美しい花 2. この世で最も貴重な鳥 3. 骨が入っているタマゴを見つけてくること、だった。実現できないことが一つでもあれば、婚約が取り消されるという。農家の娘は慌てることなく、難問を引き受けた。
三日後、農家の娘は綿の花、ツバメ、孵化寸前のタマゴを持って王宮に戻ってきた。国王と皇后のほか、大臣や金持ち、試験参加者らは皆、興味津々だった。
農家の娘は、落ち着いた様子で答えた。「花の王であると言われる牡丹は美しいのですが、綿の花のように糸を成し、織って布にすることはできません。ですから、多様に使用できる綿の花こそが、この世で一番美しい花なのです。そして、鳳凰は鳥の王であると言われていますが、燕のように害虫を捕獲し農作物を守り、人々に恩恵を与えることはできません。従って、燕が最も貴重な鳥なのです。さらに、この卵の中にはすでに雛としての骨格を形成しているので、孵化前なら骨を持つ卵になります」
回答を聞いた国王はすぐさま、「もう誰もこれ以上、重箱の隅を突くことは許さない。彼女こそが私の最も理想的な妃だ」と言った。
(翻訳編集・蘭因)