生活環境が子どもの成長に大きな影響を与えることは間違いない。しかし、子どもの将来を決定する上で最も重要なものは、生活環境よりもむしろ、自らの天賦と選択だ。路上生活を続けていたアメリカの少女、カデイジャ・ウィリアムズさん(Khadijah Williams)は、自分の能力を信じて努力を続け、2009年に米国の名門校ハーバード大学に入学した。彼女は生活環境が悪くても、自分の才能と努力で人生を切り拓いたのだ。
12年間に12回転校
ウィリアムズさんは、彼女の母が14歳の時に生まれた。ニューヨークのブルックリンで生まれ、幼い頃、家族とともにカリフォルニア州へ移住した。妹が生まれた後、ウィリアムズさんの母は娘たちを連れて放浪生活を始め、生活保護施設やモーテルなどを転々とした。路上で生活をする時も多かったという。
彼女の少女時代は、売春婦や客引き、麻薬の売人などに囲まれた劣悪な環境だった。彼女の家族はゴミ袋の上で寝ることも珍しくなかった。毎朝、体の臭いを落とすためにスーパーマーケットでシャワーを浴びてから学校へ通った。路上で生活していた時は、食べ物をどうやって見つけかれるか、安全な寝場所を如何に確保するかを常に心配していた。そんな境遇からか、学校では同級生からいじめられた。放浪生活を続け、ひとつの場所に落ち着くことがなく、12年間で12回もの転校を経験し、友達もいなかった。
環境に負けず努力を続ける
小学3年生の時、ウィリアムズさんはカリフォルニア州の学力テストで「99%級」という好成績を得た。これはカリフォルニア州の同学年の中で彼女の成績を超えた学生が1%しかいないという意味であり、彼女の学力に、学校の先生も驚きを隠せなかった。
彼女もまた、自分の学力を信じて努力を続けた。学校では同級生に疎外され、生活保護施設では雰囲気に馴染めずにいじめられたが、彼女は負けなかった。たばこ、お酒、麻薬には目もくれず、ひたすら勉強に集中した。新聞を読み、月に4、5冊の本を借りて、知識を深めるとともに、自暴自棄にならないよう強い意志を持ち続けた。
社会からの支援
高校生になったウィリアムズさんは自分一人での努力に限界を感じ、社会に助けを求めた。彼女の努力と才能が認められ、政府や民間の奨学金を得られるようになった。
高校2年生になると、母に伴って流転する生活をやめ、卒業するまで同じ高校に通うことを決意した。自分をよく知っている先生に、大学入学の推薦状を書いてもらいたかったからだ。しかし、そのためには、彼女は大きな代価を払う必要があった。彼女の住む場所から学校まではかなりの距離があったため、毎日4時30分に起床、23時に帰宅する生活を続けなければならなかった。
20校の大学に合格
数々の苦難に耐えた彼女は、多くのものを勝ち取った。学校の学績が優秀であるだけでなく、10項目の競技、ディベート大会、陸上競技にも積極的に参加し、同級生からの評価も高かった。高校は学年4位の成績で卒業し、20校もの大学から入学を許可された。最終的に、彼女は奨学金で授業料を全額まかなえるハーバード大学を選んだ。
ハーバード大学の面接官は、彼女の面接用紙に次のようなコメントを残している。「彼女を採らなければ、次のミシェル・オバマ(現在の大統領夫人)を逃してしまうかもしれない」
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