「日本外相を更迭せよ」 北京当局、前原氏を狙う 外交失速に焦りか
【大紀元日本11月1日】9月初めに起きた尖閣諸島付近の漁船衝突事件以来、悪化する日中関係。1ヶ月あまりの摩擦を経て、やっと10月29日夜、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議出席のためにハノイを訪問した菅首相と中国の温首相が、首脳会談を行う見通しが報じられた。先週再開された日中間の民間交流や、各地で炎上した学生の反日デモに中国当局が禁止令を通達したことなどの動きも含めて、日中関係が徐々に修復に向かうと思われていた矢先に、中国側の直前の首脳会談拒否が発表され、事態はまたも一転した。
「日本側が会談に必要な雰囲気を壊した」という理由で北京当局は会談をキャンセル。日本側に「すべての責任を取るよう」注文している。同日午前、日中首脳会談に先立って行われた日中外相会談で、両外相は「尖閣問題については互いの主張をぶつけ合ったが、日中両国の関係改善に向けて努力していくことで一致する」と報道されたばかり。不可解なキャンセルに日本側は衝撃を受け、どのように受け止めていいのか困惑している。
中国政府香港紙「日本外相更迭を」
10月30日、中国国内紙は一斉に、日本側が会談の雰囲気を壊したと批判している。胡正躍外務次官補がハノイで発表した内容として、「日本外交当局責任者は別の国々を動かして、尖閣諸島問題を再び話題にし、中国の領土と主権を侵害する言論を発表している。そのほか、中日外相会談について不正なうわさを広め、東シナ海問題に関する原則と共同認識における中国の立場を歪曲した」と、矛先を前原外相に向けた。
さらに、中国政府系の香港紙「文匯報」は同日、「前原誠司は中日関係のトラブルメーカー」と題する社説を発表した。「ASEAN関連会議直前、日本外交当局の責任者が、両国リーダーらのハノイでの面会の雰囲気を壊し、首脳会談の進行が不可能になった」と対中強硬派の前原誠司外相を直撃している。
同社説は「前原が代表する右翼の反中勢力が主導する日本の外交が、対抗的な対中政策を実施することは、目下、中日関係を窮境に陥らせた根本的な原因である」と太字表記で強調。さらに「日本政府にはっきり認識してもらいたいが、日本の外相を更迭しなければ、中日関係の改善は難しく、日本の長期的な安定、発展が挑まれることだろう」と、異例の厳しい口調で警告している。
また、中国政府の影響を受けている香港紙「大公報」も前原外相を「中日関係改善の障害物」として批判した。
一方、中国紙の一連の批判は、いずれも民主党政権への批判を避け、前原外相や彼が代表する強硬派に矛先を向けていることを特徴とする。
「文匯報」の社説では、「釣魚島衝突の適切な解決と中日関係の緩和をはかるため、菅首相は仕方なく自ら外交事務に介入し始めた。中国船長の釈放から、両国政府がブリュッセルで「廊下会見」したことまで、すべては日本の官房長官が直接働きかけ、タカ派の外務省を避けることで成功した」とした上、「日本がこのトラブルメーカーを外相の座から取り除くかどうかは、今後の日中関係の発展に深刻に関わっている」と露骨に注文を付けた。
日中外交の操縦に失速した北京当局の焦り
中国政府のスタンスの海外代弁者と見られている「文匯報」が日本国内に政治干渉する異例の社説から、日中関係の発展に失速した北京当局の焦りが窺える。
対日外交において、常に中国国内の反日感情を切り札として日本への圧力掛けと国内のガス抜きをしている中国当局の思惑に、9月初めに起きた漁船衝突事件以来、中国国内は反日感情が高まり、日本側に強い圧力を掛けることに奏功した。しかし、その後、尖閣諸島に関する日中間の密約が伝わり、中国側が抗議漁船を海外に出さないという内容が民衆の期待を裏切ったとして、世論が反政府へと転向する動きが出始めている。さらに最近、各地で炎上する学生らによる反日デモに反政府のスローガンも掲げられるようになり、当局の反日に対する操縦が失速する様子が窺える。
昨年、自民党が政権を失い、親中外交路線を取る民主党が政権を手に入れたことで、日本の「脱米入亜」に中国は大いに期待を寄せていた。しかし民主党政権の不安定をきっかけに前原氏が外相に就任して以来、北京の目線では、日本の外交路線が期待から徐々に脱線しているように見えていることだろう。尖閣諸島での漁船衝突事件にあたって、日本側は、これまでの自民党の国外退去だけに止まる対応を覆して、中国人の船長逮捕を決定したり、激化した日中間対立により日本が再び日米同盟強化の方向に戻ったりしている。このように、北京当局が元来の対日外交を失効させたことには、前原外相の要素が大きく作用している。
首脳会談キャンセルという日本の新たな対中外交危機について、日中関係の専門家である楊中美氏は米VOA放送局の取材で、北京当局が前原外相およびタカ派の対中外交路線を阻止する決意を示すためであるとコメントした。「北京当局は前原外相を激しく批判し、協力拒否の姿勢を取っている。その目的は、外交路線と人選を変えるよう菅首相に圧力を掛けることにある」「前原外相はタカ派集団のリーダーであり、民主党中間勢力の将来のリーダーに成り得る人物。このようなタカ派の人物に中国はかなりの反感を抱いており、前原氏の政治勢力が菅直人首相の外交政策を主導していると考えているようだ」と同氏は指摘する。
北京の対点xun_ウ力が功を奏するかどうかについて、楊氏は、日本の内閣は日中関係のバランスを取るため、前原氏の外交における発言を控えめにするなど、ある程度の変動は起こり得ると推測している。
一方、中国国内主要ニュースサイトで日中関係について執筆するコラムニスト、丁冬(口に冬)氏は今回の首脳会談中止について、評論記事で次のように分析している。日本側は「柔軟性」の外交路線を取っている中国の「暗号」を十分に読み取ることができず、中国との会談の結果を公表してしまった。これにより、知られたくない会談の結果を中国国民に伝えることになり、中国のメンツが潰れ、中国側が感情的になり、首脳会談をキャンセルすることに至った。しかし実際、「原則論」の外交路線を取っている日本は、日中関係の問題を国際化したため、却って外交上攻勢的な優位に立っており、中国側は対応に追われて窮地に立たされてしまった、と同氏は考えている。