海の漂流者 モーケン人

【大紀元日本1月27日】フィリピン、ボルネオ、タイ、ビルマなど東南アジアの岸に住むモーケン人は、「海の漂流者」という異名を持つ。

津波被害で何十万人もの死者を出したスマトラ沖地震の時、多くの生存者を残したことから、世界中から注目を浴びた。

彼らは、1年の大半を 「カバン」と呼ばれる家船(えぶね)の上で暮らす。ナショナル・ジオグラフィック誌によると、モーケン人は、船の上で生まれ、生活し、亡くなるという。一年のうちの8か月から9か月をボートの上で暮らす彼らは、この生活を『神からの罰』と考えている。神話によれば、村人たちの祖先である女王は男と結婚したが、その夫が女王の妹と姦通してしまった。怒った女王は、男を陸上から追い出し、その時からモーケン人たちは海の上を漂流しなければならなくなったのだという。

スマトラ沖地震の時、海の上やそのすぐ近くで暮らしていたにも関わらず、モーケン人は男性ひとりをのぞいて、皆助かった。

彼らだけが、津波の前兆を察して高い場所へ逃げたのだ。

モーケン人の村長サラム・グラタレイさん(Salam Glatalay)は、村に伝わる神話を話してくれた。誰かが悪いことをすると、祖先の霊の怒りに触れ、大きな波が7回押し寄せて人々をのみつくす。サラムさんがビーチを歩いていると、コオロギの声が聞こえなくなり、波が後退したために打ち上げられた魚がバタバタしていた。それを見たサラムさんは、近くの丘へ逃げるよう村人へ伝えなければ、と思ったという。

全員が丘へ逃げたが、身体の不自由な男性ひとりが不注意にも取り残され、亡くなった。村人たちは、この重大な過ちを犯したことでばちが当たると信じ、同じ場所に村を再建していない。

すべての村民がひとつの「家族」と考えるモーケン人には、「こんにちは」や、「さようなら」という言葉がない。彼らはとても貧しく、シンプルな生活をしているが、平和的で寛容だ。

地球温暖化を始め、多くの環境問題や自然災害に悩む私たちは、科学に頼るよりも、もっと自然と調和して暮らす彼らのような人々から学ぶべきなのかもしれない。