【大紀元日本10月18日】【狡兔三窟 Jiǎo tù sān kū 】危機に際し、身の安全を守るのがうまいことのたとえ。今では二つの意味がある。ひとつは事を処理するときに退路、余裕を考えなければいけないということ。もうひとつは、ずるい人は詭計が多く、防御線をいくつも設けているということ。
斉人の馮諼(ふうけん)は斉の宰相である孟嘗君の家の食客であった。ある日、孟嘗君は食客たちに、「誰か私の代わりに領地である薛邑に行って借金を取り立ててくれないか」と言った。馮諼が申し出て行くことになった。そこで、出発前に、「帰りに何か買ってくるものはないですか」と孟嘗君にたずねたところ、孟嘗君は「我が家に足りないと思うものを買ってきてくれ」と答えた。
馮諼は薛邑に行くと、債務者を集め、「孟嘗君が、お前たちの借金を取り消し、もう返す必要はないと言っていた」と伝え、さらに皆の前で借用書を燃やしたので、庶民は大いに喜んだ。馮諼が帰って来ると、孟嘗君は「借金を取り立てて、何を買ったのか」と聞いた。馮諼は「あなたの家に足りないものはない。ただ“義”の一文字が欠けている。だからあなたの言葉通り、借用書を燃やし、“義”を買って帰ってきた」と言った。孟嘗君は大変不愉快になり、彼に暇を出した。
一年が経ち、斉王は孟嘗君への誹謗中傷を聞いて、彼に「私には先王の重臣を使う勇気はない」と言った。それで、孟嘗君は自分の領地である薛邑の町に帰るほかなかった。薛邑の庶民はそれを聞いて、お年寄りや子供までもが城の外まで出迎えた。
孟嘗君は馮諼に、「あなたが私のために“義”を買ったと言う話は今日のことだったのか」と言った。馮諼は「賢いウサギは三つの“隠れる穴”を持っているので、死を免れることができる。あなたはまだひとつしか“隠れる穴”を持っていないので、日々を送るのに、憂いもなく心配もないというわけにはいかない。私に、あなたが隠れるところを造らせて頂きたい」と言った。
孟嘗君は馮諼に250キロの金と50台の車を与え、彼に遊説させた。馮諼はまず梁国に行き、梁王に「斉王は孟嘗君を首にしたのに、庶民は孟嘗君を支持している。もし、どこかの国が孟嘗君を雇って国を収めさせれば、その国はきっと強く豊かになる」と説得した。
その後、梁王はすぐに人を遣って、孟嘗君を雇いに行かせた。馮諼はこれを聞いて薛邑に戻り、孟嘗君にこの要請を断らせた。梁王は三回人を遣ったのに全部断られた。斉王は、梁王がそんなに孟嘗君を重視していることを知り、500キロの金を出して孟嘗君に謝り、彼を宰相の職に戻した。
その後馮諼は、祖先を祭るところを立てるよう提案し、そして斉王の先王を祭る用具の一部を自分にも譲ってもらい、薛邑に立てた祖先を祭るところに入れた。このようにして、孟嘗君の地位はますます強くなった。祖先を祭るところが完成したとき、馮諼は孟嘗君に「これで三つの“隠れる穴”が全部できあがった。あなたはもう安全だ」と言った。
今日の中国では、共産党幹部や政府の役人たちの汚職腐敗はひどく、彼らは自分のために金を儲け、うまい汁を吸っている。特に地方の役人たちはマフィアと結託して、農民の土地を強制的に収用し、その土地の使用権を外国の企業に高く売り飛ばして、私腹を肥やしている。このような腐敗汚職官僚はみな、「狡兔三窟」の理を悪知恵にし、西側諸国の旅券を二、三冊持っており、いざ、悪事がばれて身に危険が及ぶと、すぐ海外へ逃亡する。
このようなありさまを知った庶民の不満は蓄積し、わずかなきっかけで爆発するほど高まっている。
出典:『戦国策・斉策4』
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