中国少数民族研究会が都内で講演「脱北者の定着支援問題」

【大紀元日本7月14日】中国少数民族研究会(会長・殿岡昭郎氏)による講演が8日午後、都内麹町の食料会館内で行われ、同基金会機関紙「中国少数民族研究」の編集長・三浦小太郎氏とその協調者であるキム・キジュ氏が、脱北者の帰国後における定着支援の問題について講演した。

三浦氏はまず、6月26日に北京の北朝鮮大使館で行われた石川一二三(ひふみ)さんの奇怪な記者会見について言及し、「彼女は、母親が日本人、父親が在日朝鮮人であるが、日本国籍を有した日本人。11才のときに北に渡った」とその背景を説明した。

三浦氏によると、石川さんには兄がおり、その兄がまず日本に来て定着しようとしたが、まともに就職できず、日本社会から冷遇され、結局は生活保護を受けて、北に仕送りもできなくなったという。しかし、この兄は何とか金繰りをつけ、約三年前に中朝国境に渡り、朝鮮族ブローカーに頼んで、北朝鮮領内から一二三さんを連れ出し、瀋陽の日本領事館に保護させたという。

一二三さんは、日本に来た当初、経済力の豊かな日本で一生懸命働いて、北に送金しようと意気込んではいたが、頼みの綱である兄がまず生活保護を受けている現状であり、自身もまともに就職できなかった。千葉県の公営住宅を与えてもらったものの、やはり生活保護だけの収入だけでは、北に送金できずに悩んでいたという。

一二三さんは、貧しかったために小学校すらまともに出ておらず、日本語は会話はできたが、漢字が全く読めず、一時期は飲み屋に勤めに出ようとしたが、「レモン・サワー」「焼酎」「烏龍茶」などが読めずに苦労していたという。

一二三さんは、北に息子たちを置いてきた負い目もあって、平壌から国際電話が掛かって来ると、息子の周囲に労働党の監視があっても、コレクトコールが高額であっても、出ざるを得なかったという。当時、一二三さんは生活保護を受けており、国際電話の支払いに1-3万円を費やすなど生活は苦しかったが、「自分は日本人だ」という意識が強く、他の脱北者とは打ち解けず孤独であったという。

そのような状況の中、北から「息子さんが公安に捕まり、保釈に日本円で15万円が必要だ」との知らせをうけて一時的にパニックになったが、三浦氏は「当局にハメラレたフシがある」と指摘。次いで、今年三月に息子の一人が事故で亡くなったとの知らせを受け、一時的な思考停止状態となり、続いて北の親族からは、「とにかく帰ってきて欲しい」と告げられ、帰国に心が傾いていったのだという。

三浦氏によると、日本に帰国した脱北者約100人のうちで、まともに就職したのは約五割程度。韓国では約1万人が入韓したが、ハナウォンという定着支援施設で約半年間の職業訓練を受けて、運転免許を取り、定着支援金を200万円程度受けても、なおかつ6割程度の人がまともに就職できでいない。

日本で脱北者の定着支援をしているキム氏によると、韓国で定着支援金をまとまった形で受けた脱北者は、先着した脱北者に「北に残した家族を連れてきてやるから」と持ちかけられ、大金を騙し取られ、生活も安定せずに職を転々とするという。キム氏は、「共産主義体制下で40-50年近く過ごすと、いきなり資本主義経済の韓国に来ても適応に無理がある」と指摘した。

とはいえ、脱北者にとって、韓国は日本より遥かに生活し易いという。韓国は同一民族であり、また親戚が南にいる場合には、彼らが借金までして支援してくれるからだ。キム氏によると、南北が統一した時に「橋渡し役」として働かなくてはいけないのは、脱北者であるが、韓国社会が彼らを大事にしていないのを見ると「一抹の危機感を感じる」と警鐘を鳴らした。

聴衆の一人から「韓国社会の一つの不満として、脱北者は韓国社会の周囲からよくされても感謝の言葉を言わない、というものがあるが、どうしてか」の質問に対してキム氏は、「北の共産主義社会では、持てる人が持てない人に与えるのは当たり前。ある意味では人間的とも言えるが、しかし南の人にも北の人間に偏見があるのも事実だ」と述べた。これに対し三浦氏は、「北の人間にとって、金持ちは悪であり、貧乏な人がこれを受け取るのは正義なんだというフシがある。ちょうど、北と南では価値観が逆だ」と指摘した。

また「どうして脱北者は、豆満江や鴨緑江を越えて、陸路で中国を目指すのか?どうして清津などの港から、船で釜山など南の海岸線を目指さないのか?」との質問に、キム氏は「夜は、民間人は海岸線に近寄れないし、昼間港で働く人たちは、生活に申し分のない脱北する危険性の少ない人たちだ。また、いざ船で外洋に出ようとしても燃料がない。この前、日本にたどり着いた脱北者は、運がよかったとしかいいようがない・・」と海路の難しさを指摘した。

日本での脱北者は、新大久保の在日朝鮮人が経営している焼肉屋、比較的日本語での会話が少ない警備会社、またはサウナなどで働いているが、就職前に「北の人間です」と明かすと、就職が難しくなるのが日本社会の実情だという。キム氏は「私は、1977年、18歳の時に日本の相撲部屋に入門した。当時は、日本語が分からずに緊張の連続だったが、女将さんを始め、北は北海道から南は九州まで、周囲の日本人から暖かい恩を受けた。中朝国境で日本人妻の脱北者を見たとき、この恩を返そうと思った」とそもそもの協調活動の動機を述べた。

関連記事
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
オーストラリアのピーター・ダットン国防相は22日、宇宙司令部の設立を発表し、「強硬で好戦的な中露両国」に対抗できる宇宙軍事能力が必要だと述べた。
中国メディアは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、反米・反北大西洋条約機構(反NATO)などの親ロシア政権の宣伝工作(プロパガンダ)を積極的に推進している。
ロシアのウクライナ侵攻に対して世界の有力国が一致団結してロシアに壊滅的な経済制裁を加える中、米国はロシア支援を続ける中国企業への制裁も視野に入れ、中露の枢軸を断ち切ろうとしている。
欧米の経済制裁はロシアを中国共産党に接近させ、権威主義の枢軸は中国とロシアの勢力圏にある他の国々に拡大する可能性がある。