ファンタジー:個人タクシー「金遁雲」の冒険独白(7-1)

【大紀元日本7月9日】私は、時々仕事に疲れると、新宿御苑明治神宮といった大きな公園に行くことにしている。東京のような都会で運転を続けていると、精と根が擦り切れてくるからだ。樹木が鬱蒼と茂る御苑の中で、煉功し座禅していると二時間位で「精」「気」「神」が回復しているのが実感として分かる。

それにしても、私がここ東京で気になることがある。それは、このような公園の一角にある廃材置き場や朽木の中に、捨てがひっそりと暮らしていることが多いことだ。この日も、私がとある御苑内の一角で煉功していると、朽木の中から「ミャー」という声が聞こえてきた。みると、母猫を中心に可愛い子猫が六匹ほどいる。捨て猫なのだろう、どの子猫も痩せて食料に困っている様子だ。

私は、修煉者なので土地の気がどこがベストなのか、肌で知っている。一方、こういった獣たちも本能でこういった所で傷を癒したり、休んだりするので対面することが必然的に多くなる。私は、こういった猫たちを見ると、「あ~可愛そうにな!捨てられた君たちが悪いんじゃない!飽きて捨てた人間の方が悪いんだよ!」と言って、パックの牛乳やソーセージなどを与えるのが常だ。

そんなことをしていると、必ずといっていいほど、公園を管理するオバサンが寄ってきて、叱責される。「また中国の張さんですね!捨て猫に牛乳を与えないように言ってるでしょ!それは公園規則なんですからね・・・」「でも・・猫に罪はないし・・捨てる人間の方の罪でしょ?」すると、決まってこういった役人はカンカンになって、「こういった猫はねぇ、人間がちゃんと面倒を見ないと不衛生なんです!!これから暑くなるのに、用便に細菌が繁殖し・・・」、「・・・それは土に還るからいいんじゃないですか?」「とにかく、もうやめてください!」・・・侃侃諤諤。

というので、最近はこういった人たちの目を盗んで猫たちの面倒を見ることにしている。その日も、私は御苑で煉功した後、猫たちにこっそりと牛乳やら酒飲みの肴になるような小魚などを与え、その後は四谷界隈を流していた。すると、JR四谷駅付近の新宿通り沿いにあるペットショップ「ラッキー・アニマル」が妙に気になって止まった。いつもなら、気にもしていないのだが・・・

ショーウィンドウには、女性アイドルタレントが子猫を抱き「ペットは人間の友達!」と銘打ったポスターが貼られているが、店内の犬や猫は一様に悲しそうだ。ガラス越しに私に強い意念を送る美しい猫がいたので、交信を試みた。「・・・私はタイ出身・・・どうしてここに・・狭い・・苦しい・・出して、助けて!・・・」、私は何だか悲しい気分になり、店のガラス製の玄関を手荒く開けると、店員に詰め寄った。「おい!この青い瞳の猫はいくらだ・・・」。

若い女の店員は、何か面食らったのかドギマギして、「・・・はい、そのシャム猫でしたら、血統書付きで50万円になります・・」「高い!ちょっと待ってろ!」・・・私は、店外に出るとそそくさと葉っぱを拾い集め、それを日本の人民幣に片っ端から変換した。このとき、頭に妙に血が上っていたので、図案の福沢諭吉が、あいにく酒飲みの「張飛」に若干似てしまったが・・・

私は、シャムネコをバスケットに入れてもらうと、金遁雲に乗り込み、一路明治神宮に向かった。参宮橋で車を降り、バスケットを手にして神宮の神域内に入る。鬱蒼とした樹木と奥にある拝殿から来る神気のコラボレーションで心身が爽快になってくる。私は、宝物殿のさらに奥まで入ると、バスケットを静かに開けて、「ホラ!これで自由だぞ・・」といって、猫を送り出してやった。シャムネコは、こちらを振り返ると「有難う・・この借りは必ず・・」と意念を送り、森の奥へと消えていった。

すると、人の気配がするので振り向くと、ちょうどカップルがこの様子を見ていて、「・・・なんなんだ!あいつは、あんな高級猫を捨てたりして・・大方失業でもして自分が食えなくなったからか何かだろう・・無慈悲だな」などとホザイテイル。私は何かダブルで頭に来て「違う!これは、放生(ホウジョウ)だ!東南アジアでは、今でも盛んに行われている!」と怒鳴ると、面食らったようで、「・・ホウジョウだって?何のことだ?聞いたこともない・・あ、分かった・・こいつは失業者じゃない、精神異常者だ・・」といってそそくさと退散してしまった。

聞くと、この国の人たちは、ペットにする犬猫を断種するために、その生殖器に手術を施しているという。であればだ、この国の女性には、子宮筋腫や不妊が頻発していても可笑しくないだろう。それが「因果応報」だ。