心臓の健康は心臓発作を防ぐだけでなく、将来の健康を予測する「水晶玉」ともいえます。最近の約500の研究をまとめたレビューでは、心臓の健康が認知症のリスクを86%、腎臓疾患を62%、がんを20%減らすことがわかりました。さらに、心臓に良い習慣を1つ追加するごとに、うつ病のリスクが10%減少します。
この発見について、アメリカ心臓協会の会長であり、ノースウェル・ヘルスの女性健康担当上級副社長でもあるステイシー・E・ローゼン博士は「心臓を健康に保つことが、頭からつま先まで全身の健康につながる」とエポックタイムズに語りました。
あなたの未来を予測する7つのシンプルな指標
『Journal of the American Heart Association』に掲載された新しいレビューは、医師が「ライフ・シンプル7」と呼ぶ、心臓の健康を7つの主要な領域で測定する枠組みに焦点を当てています。
3つの健康行動
- 健康的な食事
- 身体活動
- 喫煙状況
4つの健康因子
- 体格指数(BMI)
- 血圧
- 総コレステロール
- 空腹時血糖値
アメリカ心臓協会のライフ・シンプル7枠組みは、個人の行動と全体的な健康を評価するものです。
理想的な心臓の健康とは、この7つの領域のうち少なくとも6つで理想的な基準を満たすことと定義されます。
5年間、理想的または中程度の心血管健康を維持すると、高血圧のリスクは33%、主要な慢性疾患は25%、すべての原因による死亡は14%削減されます。
研究によれば、「ライフ・シンプル7」の目標の中には達成しやすいものと難しいものがあります。禁煙は最も達成しやすく、逆に健康的な食事を維持するのが最も難しく、食事目標を達成した人は1%未満でした。
「健康的な食事は血管の健康を改善し、全身の健康向上につながります」と、テキサス大学オースティン校デル医科大学の腎臓専門医で教授のドナルド・E・ウェッソン博士はエポックタイムズに語りました。「これは特に脳や腎臓のように血管密度の高い臓器に当てはまります」
研究では、理想的な身体活動は若年成人期にピークを迎えますが、10代と高齢者では減少し、それぞれのグループで推奨レベルを満たしているのは約4分の1にとどまることもわかりました。また、体重、血圧、コレステロール、血糖などの他の指標は青年期には良好ですが、加齢とともに着実に低下します。
ローゼン博士は、コスト、時間、仕事や家庭などの日常の責任により、多くの人が健康的な食事や運動を継続するのに苦労していると指摘しました。
「お金、資源、サポートが不足しているといった大きな問題が、健康的な生活を難しくしているのです」と彼女は付け加えました。
心臓の健康が全身に与える影響
心血管系が不調になると、全身に連鎖的な問題を引き起こします。
慢性的な炎症は、心臓の健康が悪化することで他の疾患につながる主なメカニズムの1つです。心血管の健康が損なわれると、体を低度の炎症状態に保つ免疫応答を引き起こすことがあります。炎症が長く続くと、血管や臓器に損傷を与え始めます。
心臓の健康が低下すると、高血圧、血行不良、過剰な体脂肪などの問題が血管や組織を損傷します。この損傷は不安定な酸素分子(フリーラジカル)の蓄積を引き起こし、体の自然な防御を圧倒して酸化ストレスを発生させます。酸化ストレスは細胞がインスリンを利用しエネルギーを管理することを妨げ、2型糖尿病や脂肪肝疾患のリスクを高めます。
さらに、不健康な食事、感染症、汚染といった環境要因は炎症と酸化ストレスを悪化させ、血管や臓器への損傷を加速させます。
心臓の健康を改善する8つのステップ
心臓の健康を改善するために実行可能なステップは以下の通りです:
- 果物と野菜を増やす:1日に10皿の果物と野菜を食べると、心血管疾患のリスクが28%、すべての原因による早期死亡が31%減少する可能性があります。
- 活動的に過ごす:週に150分の中程度の活動、または75分の激しい活動(速歩、サイクリング、ランニングなど)は、死亡リスクを21%減少させます。これを2~4倍多く行うと、その効果が31%に増える可能性があります。ただし、大きな運動である必要はありません。「座る時間を減らし、1時間ごとに立ち上がってストレッチするだけでいいのです」とローゼン博士は述べました。
- 禁煙:喫煙をやめると、血管へのダメージが直接減少し、コレステロールと血圧レベルが下がります。禁煙から1年後には、脳卒中と心臓発作のリスクが半分になります。
- 塩分摂取の管理:塩分を2,300mg減らすと、収縮期血圧が5.6mmHg、拡張期血圧が2.3mmHg低下します。参考までに、収縮期血圧が5mmHg下がるごとに、心血管イベントのリスクは10%減少します。
- 十分な睡眠:5時間未満の睡眠は、7~8時間の睡眠に比べて動脈疾患のリスクを2倍に高めます。ローゼン博士は、テレビを早めに消す、寝る前に電子機器を片付けるなど、良い睡眠習慣を実践することを提案しています。
- 睡眠時無呼吸のスクリーニング:いびきをかく、または日中に異常な疲労を感じる場合は、閉塞性睡眠時無呼吸のスクリーニングを検討してください。未治療のままでは、高血圧、心不全、脳卒中、心疾患のリスクを高めます。
- 感情の管理:頻繁で繰り返される怒りは、血管の拡張を妨げることで心疾患のリスクを高める可能性があります。一方で、幸福感や満足感といったポジティブな感情は、心疾患や脳卒中の予防に役立つ可能性があります。
- 口腔の健康管理:口腔の健康が悪いと歯周病を引き起こし、慢性的な炎症や血管の損傷を通じて心臓病リスクを高めます。1日2回、少なくとも2分間の歯磨きをすることで、そのリスクを減らせます。
始めるのに遅すぎることはない
確立された利点があるにもかかわらず、世界的に見て心血管健康は依然として低い水準にとどまっています。多くの研究では、7つの指標すべてを理想的なレベルで満たす人は4%未満で、12~17歳の青少年でやや高率となっています。一般的に女性は男性よりも心血管健康が優れています。
若いうちに健康的な習慣を築いた人は、中年期までそれを維持する可能性がはるかに高いです。心疾患の遺伝的リスクが高い人であっても、7つの指標のうち少なくとも3つを理想的な範囲に保つことでリスクを減らせます。
200万人以上を対象とした国際研究では、55~60歳の成人が高血圧を下げると、男性で約1年、女性で2年以上「心血管疾患のない生活」が延びることが示されました。この年齢で禁煙することは、2年以上の追加の健康寿命をもたらす最大の効果がありました。
リスク要因を改善すればするほど、健康な年数は増えます。4つのリスク要因を改善した人は、心疾患や早期死亡を避け、5年以上の健康寿命を得ました。
さらに別の研究では、心血管健康が悪かった人でも、中程度または理想的なレベルに改善した場合、悪い状態のままの人に比べて心血管疾患のリスクを33%、早期死亡を20%減らせることが示されました。
(翻訳編集 日比野真吾)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。