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潤して冷ます秋

秋の暑さで傷む肺 潤し冷ます養生の知恵

8月7日から「立秋」に入り、暦の上では秋が始まります。まだ暑さは続いていますが、五行における「金の気」がすでに地上を支配し始め、気候に大きな影響を与えています。そのため、立秋を過ぎると、肌の乾燥や喉のかゆみ、便秘などを感じやすくなります。

中医学では、宇宙の万物が「天人合一」という思想のもと、五行のエネルギー(木・火・土・金・水)によって動いていると考えます。特に秋には、「立秋」から天地の気の流れに3つの明確な変化が起こり、それぞれの臓腑に影響を与えるとされています。

この三つの気は、それぞれ異なる五行のエネルギーが地球に働きかけ、人の体にも影響を及ぼします。そのため、これらの気がどのように体に影響するかを理解し、それに合った食材を選んで身体のバランスを整えることで、健康を保つことができます。
 

一、冷たく乾いた「金の気」が肺を傷つけやすくする

立秋以降、気候を主導するのは「金の気」で、これは涼しく乾燥し、内へ一ヶ所に集める特徴を持ちます。肌の毛穴が引き締まり、夜風に冷たさが混じり、喉や口が乾きやすくなるなどの変化が現れます。

五臓の中で「肺」は五行の金に属しており、この「金の気」と直接つながります。肺は潤いを好み乾燥を嫌うため、乾燥した気候になると真っ先にダメージを受けます。肺と大腸は表裏の関係にあるため、乾燥は肺だけでなく大腸にも影響し、便秘を引き起こすこともあります。肺が乾燥すると、咳が出たり、鼻や喉が乾燥したり、肌がかゆくなるなど、いわゆる「秋の乾燥症状」が起こりやすくなります。

これは毎年規則的に起こる、地球の四季による安定した変化です。
 

二、地球に漂う「湿気」が脾胃の働きを妨げる

2025年の7月22日から9月22日は、地球のエネルギーサイクルの「第四の段階」にあたり、「湿土の気」が支配しています。そのため、立秋を過ぎても空気がどんよりと曇り、体が重く感じたり、スッキリしない日が続くことがあります。

湿気は五行で「土」に属し、脾と胃の働きに直結します。脾は消化と吸収を司る臓器で、湿気によってその働きが妨げられると、食欲不振、腹部の張り、下痢、だるさなどが現れます。また、脾と胃は体の中心にあり、肺はその上に位置するため、脾胃の働きが滞ると肺の気の流れも妨げられ、胸の圧迫感や息切れ、不眠を招くことがあります。

これは「地の気」のサイクルによる変化であり、こちらも毎年決まった周期で繰り返されます。
 

三、天外からの「火の気」が侵入し、この秋は「火が肺を焼く」状態に

今年2025年の最も特徴的な変化は、天体の運行によってもたらされる「火の気」の影響です。これは前述の二つの気と異なり、毎年変動があり、今年はこの「天外の火の気」が特に強まっています。この火の気は「心」の働きに影響し、心の火が高まり、肺の気の流れが妨げられます。

五行では火は金(肺)を抑える性質があるため、肺の機能がさらに弱まります。今年の主気は「風木の気」であるため、風と火が合わさることで火の勢いが強まり、「秋になっても暑さが続く」という異常気象が起きやすくなります。その結果、肺を潤すことや体の熱を冷ますことが特に重要になります。

本来であれば火の気は夏に活発になるはずですが、それが秋に現れたため、秋風の中に「目に見えない火」が混じっているような状態になっています。この影響により、肺の気が落ち着かず、腎にまで届かなくなるのです。

今年の立秋は肺の熱による咳、乾いた痰、喉の痛みなどの症状が現れやすい(Shutterstock)

こうした影響により、肺の熱による咳、乾いた痰、喉の痛み、口内炎、イライラ、不眠、皮膚の乾燥、便秘、尿の色が濃くなるといった症状が現れやすくなります。

この天外の気は「客気」と呼ばれ、毎年異なる外的エネルギーとして地球に影響を与え、その年特有の異常気象を引き起こす要因となります。2025年の「秋の暑さ」はこの客気が原因です。

三つの気が重なって肺に影響を及ぼすこの秋は、「肺を潤し、熱を冷まし、湿気を取り除いて脾を元気にする」ことが養生の基本です。

体に合った食材を選び、自然の流れに従って体調を整えることで、気のバランスを調和させ、健康を保つことができます。次に、この秋におすすめの養生レシピをご紹介します。

 

茄子の浸し 清熱・潤肺・整腸におすすめ

茄子の浸しのイメージ写真(Shutterstock)

食材:茄子、しそ、生姜おろし、かつおだし

効能:

  • 茄子: 体の熱を冷まし、肺を潤し、血の巡りをよくし、腸を整えて便通を促します。
  • しそ: 辛味があり温性。気の巡りを整え、気分をほぐし  て肺の働きを助け、食欲を促進します。
  • 生姜おろし: お腹を温めて冷えを散らし、消化を助けます。
  • かつおだし: 肝の気を整え、胃の働きを高めて消化を促します。

作り方(2人分):

  1. 茄子2本を洗って乱切りにします。
  2. フライパンに油を熱し、表面が少し焦げるまで焼き、内部がやわらかくなるまで火を通します。
  3. 焼き上がった茄子を取り出して、冷水に浸して粗熱を取り、形を整えます。
  4. しそは細かく刻み、生姜はすりおろします。
  5. かつおだしに少量の醤油とみりんを加えて味を整え、茄子にかけます。
  6. 最後にしそと生姜をのせて、冷蔵庫で冷やしてからお召し上がりください。

効能まとめ:

茄子の紫色の皮は血行を促進し、白い果肉は肺や大腸に作用して便通を良くし、肺を潤します。温性の生姜と合わせることで、体の熱を冷ましつつも脾を傷めず、肝の気を柔らかく整えて、心身のバランスを保ちます。

 

ゴーヤと豆腐の炒めもの 心を静めて熱を冷まし、安眠を助けます

ゴーヤと豆腐の炒めものイメージ写真(Shutterstock)

食材:ゴーヤ、豆腐、かつお節、少量の味噌

効能:

  • ゴーヤ: 心と肺の熱を冷まし、気持ちを落ち着けて眠りを助け、肺を潤して喉の渇きを和らげます。
  • 豆腐: 体力を補い、乾燥を和らげます。
  • 味噌: 少量使うことで、脾を温め、胃の働きを助けます。
  • かつお節: 旨味を加え、肝の気の巡りを整えます。 

作り方(2人分)

  1. ゴーヤ半本は種を取り除き、薄く切ります。さっと下ゆでして苦味をやわらげます。
  2. 豆腐1丁は小さめの角切りにし、オリーブオイルで軽く焼いて形を整えます。
  3. フライパンにゴーヤを加え、さらにかつお節をひとつまみ加えます。
  4. 少量の味噌と水を加え、全体をさっと炒めます。
  5. 汁気が少し残る程度で火を止めて、お皿に盛りつけて完成です。

効能まとめ

ゴーヤの苦味は心に作用し、余分な熱を発散させて気持ちを穏やかにします。豆腐は陰を養って肺を守り、体の乾燥を防ぎます。この一品は、心を鎮めて安眠を助け、脾の働きも優しく整えてくれるレシピです。

 

大根と鶏肉のスープ 肺を潤し痰を抑え、脾を整えて消化を助けます

大根と鶏肉のスープのイメージ写真(Shutterstock)

食材:白大根、鶏肉、生姜、昆布

効能:

  • 大根: 辛味と甘味があり、涼性。肺と脾に作用します。便通を促進し、脾を元気にして食べすぎによる不調を改善します。
  • 鶏肉: 体を温めて気を補い、胃と脾をやさしく養います。
  • 生姜: 体を温めて湿気を追い出します。
  • 昆布: 水分の排出を助け、しこりをやわらげ、腎の働きを整えて水分代謝を促します。

作り方(2〜3人分)

  1. 鶏もも肉200gを一口大に切り、熱湯でサッとゆでてアクを取り除きます。
  2. 大根1本は皮をむいて大きめに切り、昆布は5cm程度にカットします。
  3. 鍋に水と鶏肉、大根、昆布を入れて火にかけ、30分ほど煮込みます。
  4. 生姜の薄切りを加えて風味を整えます。
  5. 大根がやわらかく、鶏肉がしっとり煮え、澄んだスープになれば完成です。

効能まとめ

このスープは、脾の働きを整えて湿気を取り除き、肺を潤して利尿を助け、腎を守りながら体のバランスを調える効果があります。特に「上は熱く、下は冷える」といった不調の緩和にも役立ちます。

 

まとめ:食養生の基本は「天の気に順応し、時を選ぶ」こと

今年の立秋前後は、「火」「燥」「湿」の三つの気が地上に影響を与えています。中医学では「肺は繊細な臓器」とされ、乾燥や熱に弱く、特に潤いが必要とされます。

そのため、初秋の食事は「清淡で、冷たすぎず熱すぎず」が基本。肺を潤し、便通を促し、よく眠れるように整え、脾を養って湿気を取り除くことを重視しましょう。涼性・清熱・潤燥の食材を上手に取り入れ、肺を中心に五臓のバランスを調えることが、初秋の正しい中医的な食養生といえます。

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。