【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

40年以上の謎解明! ヘリックス星雲の中心からX線が放たれる理由

天文学者たちは初めて、惑星がヘリックス星雲の中心にある白色矮星(わいせい)によって破壊されたことを確認しました。この現象は40年以上にわたって、ヘリックス星雲から検出されていた謎のX線信号を説明できるかもしれません。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、3月4日に発表した公式プレスリリースで、1980年に遡ると、天文学者たちがアインシュタイン観測所(Einstein Observatory)やローゼンチャン望遠鏡(ROSAT)を使って、すでにヘリックス星雲の中心から強力なX線信号が検出されることを説明していました。

そのX線は、ヘリックス星雲の中心にある白色矮星WD 2226-210から放たれる高エネルギーX線です。WD 2226-210は、地球からわずか650光年の距離にあります。しかし、通常、WD 2226-210のような白色矮星はX線を放出しないため、この発見は非常に注目されています。

ヘリックス星雲は、いわゆる惑星状星雲(planetary nebula)と呼ばれる天体で、星が晩期段階で外層を失い、中心に残された小さな暗い星の残骸が白色矮星となります。そして今回、NASAのチャンドラX線天文台(Chandra X-ray Observatory)や、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のXMM-ニュートン(XMM-Newton)など、最先端のX線観測機器を用いた新研究によって、WD 2226-210がX線を放出した理由が、40年以上の歳月を経てついに解き明かされました。

NASAが公開した螺旋星雲の合成画像(ページ冒頭の画像)は、チャンドラX線天文台によるX線(マゼンタ色)、NASAのハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)による可視光データ(オレンジ色、水色)、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の可視光およびVISTA望遠鏡による赤外線データ(金、濃紺)、そしてNASAの紫外線観測衛星(GALEX)による紫外線データ(紫)で構成されています。

チャンドラX線天文台のデータによると、WD 2226-210はその非常に接近した軌道を周回する惑星を破壊したことを示しています。

研究の筆頭執筆者であるメキシコ国立自治大学(National Autonomous University of Mexico)の天文学者サンディノ・エストラー・ドラド(Sandino Estrada-Dorado)氏は、「私たちは、X線信号が白色矮星に引きずり込まれた惑星の残骸から放たれていると考えています。まるで、ヘリックス星雲の中にある白色矮星に破壊された惑星が力を振り絞って発した最後の叫びのようなものです」と述べています。

彼は「40年以上続いていた謎の答えに、ついにたどり着いたかもしれません」と語っています。

アーティストが描いた、白色矮星(右)によって破壊された惑星(左)のイメージ図(NASA/CXC/SAO/M.Weiss)

天文学者たちは、いままで海王星サイズの惑星がWD 2226-210の非常に近い軌道を周回しており、3日以内に1周していると推定していました。しかし今回の新研究では、木星のような惑星が、さらに白色矮星に接近していた可能性があると結論づけています。

この惑星は当初、WD 2226-210からある程度離れましたが、その後、同じ惑星系にある他の惑星の重力場と相互作用することで次第に内側へ移動した可能性があります。そして、白色矮星に十分近づくと、恒星の重力によって惑星は部分的、もしくは完全に引き裂かれたのです。

研究に参加した共同執筆者である、スペイン・アンダルシア天体物理学研究所(Institute of Astrophysics of Andalusia)の天文学者マルティン・ゲレーロ(Martin Guerrero)氏は、「私たちが観測できた謎の信号は、おそらく引き裂かれた惑星の破片が白色矮星の表面に落下し、熱されてX線を放出したことが原因だと考えられます」と説明しました。

彼は、「この現象が確定すれば、惑星状星雲の中心にある恒星が惑星を破壊する初の観測例となります」と語っています。

WD 2226-210によるX線を放出した挙動は、惑星状星雲内には存在しない2つの白色矮星といくつかの類似点があります。そのうちの1つは、伴星(はんせい)という連星系における暗い方の星から物質を引き離していますが、その過程が穏やかに見え、すぐに惑星を破壊することはありません。

もう1つの白色矮星は、すでに破壊された惑星の残骸から物質を表面に引き込んでいると考えられています。

共同執筆者であるもう一人、メキシコ国立自治大学の天文学者ヘスス・トアラ(Jesús Toala)氏は、「このようなプロセスをさらに多く見つけることが大事です。それによって太陽のような恒星の周りにある惑星が、晩期の生存状態と破滅ついて、より深く理解できることを導いてくれるかもしれません」と述べています。
                   

(翻訳編集 正道勇)

陳俊村