早発卵巣不全は、多くの女性が直面する健康問題です。この症状は、不妊や肌の老化を早めるだけでなく、心血管系や骨の健康にも影響を及ぼす可能性があります。伝統的な中医学の専門家は、卵巣機能の低下の初期兆候を、顔に現れる2つの特有のサインから見極めます。そして、腹部のツボをマッサージすることで卵巣の活性化を促します。
早発卵巣不全の症状
台湾の「She Health」番組で、程秀士(チェン・シウシ)中医クリニックの院長が解説したところによると、女性は通常45~55歳の間に閉経を迎えます。しかし、早発卵巣不全とは、40歳未満の女性において卵巣機能が早期に低下し、不妊や閉経の早期発症を引き起こす状態を指します。
閉経は、ホットフラッシュ(のぼせ)、動悸、イライラ、不眠といったさまざまな症状を伴い、老化を加速させます。さらに、閉経期の女性は中医学で「陰虚内熱」と呼ばれる状態(体内の潤いが不足し、熱がこもる症状)に陥りやすく、これにより皮膚や体内の乾燥が進行します。
この乾燥症状は、膣の乾燥、口の渇き、唇のひび割れ、顔の皮膚の乾燥、そして目の乾燥として現れることがあります。特にドライアイ症候群をすでに抱えている女性は、閉経後にその症状が悪化することが多くなります。
また、あるケースコントロール研究では、早発卵巣不全の女性は同年代の閉経前の女性と比べて、さまざまな心血管リスク因子が高いことが明らかになりました。別の研究では、早発卵巣不全の女性は骨粗しょう症や骨折のリスク増加も報告されています。
顔に現れる兆候
中医学では、病気を診断する際に「望診(観察)」「聞診(聴覚と嗅覚)」「問診」「切診(触診)」の四診法を用います。このうち「望診」は、患者の体に現れるさまざまな兆候や病変を観察する手法です。程医師によれば、上唇と鼻の間にある溝(人中)は子宮と膀胱の健康状態を反映し、生殖器系や泌尿器系の状態を示す重要な指標です。
若い女性と年配の女性の違いは、人中の隆起(溝の両側の盛り上がり)や唇の輪郭の明瞭さで判別できると程医師は指摘しています。人中と唇の輪郭がはっきりしている場合は、体内に十分な「気」(生命エネルギー)と「血」(血液や栄養素)があることを示します。
中医学で言う「気」は、体内の生命エネルギーや力の源を指し、「血」は体を補う栄養素全般を意味します。「気」と「血」の循環は、組織や臓器のバランスと安定を保つ役割を担っています。しかし、体内で「気」と「血」が不足したり、バランスを欠いたりすると、病気や他の症状が現れる可能性があります。
女性は通常、26~28歳の間に卵巣機能が最も活発になり、この時期には「気」と「血」が最も豊富で、人中や唇の輪郭もはっきりしていることが多いようです。しかし、年齢を重ねるにつれて卵巣機能は徐々に低下し、「気」と「血」も減少していきます。それに伴い、人中の隆起が平らになり、唇の輪郭がぼやける傾向があります。
閉経を迎えた女性や、妊娠を希望しているが難しい状況にある女性には、人中の隆起が平らになっていないか、唇の輪郭がぼやけていないかを確認することを程医師は推奨しています。これらの変化は、「気」と「血」の不足を示している可能性があるからです。
中医学による治療法
程医師によれば、早発卵巣不全は体内のホルモンレベルが低下し、それが卵巣機能に影響を及ぼすことによって引き起こされる場合があります。中医学の治療法は、体質を整えることで自然な機能を回復させ、早発卵巣不全を改善する可能性があります。
程医師はかつて、30歳で閉経し、早発卵巣不全と診断された45歳の女性を治療しました。この女性は当初、慢性的な体の不調を和らげるために診療を受けに来ました。程医師は血流を促進し、瘀血(おけつ、血液が体内で滞る状態)を解消する漢方薬を処方しました。その後まもなく、この女性は予想外の大量出血を経験しました。診察の結果、それは月経血であり、ホルモンレベルが正常に戻り、生理周期が再開したことが判明しました。
程医師は、この女性の状態は骨盤内の瘀血が原因であり、それが早発卵巣不全として現れていたと推測しました。体の不調を改善するために処方した血流促進の治療が、偶然にも閉経症状を解消する結果となったのです。
このケースは「偽早発卵巣不全」の例として分類されました。これは、症状が実際の卵巣機能不全と似ているものの、回復が可能な状態を指します。
卵巣の健康を促進する経穴マッサージ
メタ分析の結果、鍼治療が早発卵巣不全に関連する症状を緩和し、卵巣機能を改善することで妊娠の可能性を高める効果を示しました。
中医学では、経絡は体内を流れるエネルギーの通り道であり、「気」と「血」を運ぶ役割を果たしています。経絡は内臓と体の表面をつなぐネットワークであり、その上にある特定のポイント(経穴)は、それぞれ独自の機能を持っています。鍼やマッサージなどの技術でこれらの経穴を刺激すれば、特定の臓器に関連する病気を治療することができます。
程医師によれば、「偽早発卵巣不全」の場合、下腹部にある「気海(きかい、体内エネルギーの集中点)」および「関元(かんげん、生殖器系の健康に関わる経穴)」という経穴を深くマッサージすることで効果が期待できるといいます。これらの経穴を押すことで、卵巣周辺の「気」と「血」の循環が改善され、一時的な卵巣機能不全を薬を使わずに改善できます。
気海(きかい)経穴は、へその下にあり、指2本分の位置にあります。関元(かんげん)経穴は、へその下にあり、指4本分の位置にあります。マッサージの方法としては、経穴を深く押し、心地よい圧力を感じる程度に刺激を与えた後、力を緩める動作を繰り返します。これをサイクル的に行うことで、より高い治療効果が得られます。程医師は、指の疲労を防ぐためにマッサージスティックを使って圧力を加えることを推奨しています。
程医師はまた、早発卵巣不全の進行は徐々に進むため、卵巣機能の低下が進む過程で薬物治療を併用することで状態を逆転できると述べています。
さらに、動物実験では、中医学の漢方処方「左帰丸(さきがん、卵巣機能を回復するための伝統的な漢方薬)」が卵巣機能を回復させることで卵巣老化を予防する効果があることを、『Journal of Ethnopharmacology』誌は発表しています。
卵巣の健康を保つための日常ケア
過度なストレスは早発卵巣不全を引き起こすと程医師は指摘しています。中医学では、肝臓は感情の健康と深く結びついていると考えられており、感情的なストレスが肝経(肝臓から体を巡るエネルギーの流れ)の滞りを引き起こすことがあります。肝経は子宮の近くを通っているため、ストレスによる肝経の滞りは妊娠や月経に影響を及ぼす可能性があります。また、この滞りは卵巣機能にも悪影響を与えます。
ストレスを効果的に管理し、経穴マッサージを併用することで、心身をリラックスさせ、「気」と「血」の循環を促進できます。このアプローチは卵巣の健康をサポートし、老化を遅らせるために重要です。
注意 治療方法は個人によって異なる場合があります。具体的な治療計画については、医療専門家にご相談ください。
(翻訳編集 華山律)
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