使い捨てのフェイスマスクは、COVID-19パンデミック中に保健当局が推奨(または義務化)したもので、多くは合成繊維で作られており、化学物質が含まれていることがあります。こうしたマスクを長時間着用することの安全性について、多くの人々が疑問を抱いており、マスクから放出される化学物質が、健康に悪影響を及ぼす可能性があるかどうかが問題視されています。
マスクは24時間で最大5390個のマイクロプラスチック粒子を放出する可能性があり、特に外科用マスクでは1時間未満で約3152個のマイクロファイバーを放出することがあると、4月に「Ecotoxicology and Environmental Safety」誌で報告されました。
このレビューを行うために、ドイツとスイスの研究者たちは、外科用マスク、布マスク、N95マスクを含む631種類のマスクに関する24の研究を検討し、マスクの成分と放出される物質について調査しました。その結果、マスクの63%から「警戒すべき結果」が示され、多量のマイクロプラスチックやナノプラスチックが放出されていることが明らかになりました。
研究者たちは、マスクに含まれる多くの物質が人間に対する安全基準を超えていることを発見しました。これには、揮発性有機化合物(VOC)、キシレン、アクロレイン、パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)、フタル酸エステル、鉛、カドミウム、銅、二酸化チタン(TiO2)などが含まれています。
2022年に「Nature」誌に掲載された研究では、12種類のマスク全てが吸入による二酸化チタン(TiO2)の許容暴露レベルを超えていることが判明し、研究者たちはTiO2の使用に関する規制基準の設定を求めています。TiO2は、潜在的なヒト発がん性物質とされています。
最新の研究
最近「Environment International」誌に掲載された「フェイスマスク使用による可塑剤の吸入リスクの包括的評価」という研究では、4種類のマスクに含まれる31種類の可塑剤の存在を調査し、実際の使用状況を模したテストでこれらがどれだけ放出され、吸入されるかを検証しました。
研究者たちは、4種類のマスクすべてで可塑剤の濃度が似ていることを報告していますが、特に外科用マスクとヨーロッパで広く使われているFFP2マスクでは、約4%(それぞれ3.9%と4.8%)という高い放出率が見られました。
研究者たちは、「フェイスマスクは主にポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルなどの合成素材で作られている」と説明しています。この研究を行ったのは、スペイン・バルセロナの環境評価と水研究所に属する、人間の健康のための環境および水化学(ONHEALTH)グループのメンバーです。
また、メーカーはマスクに柔軟性や柔らかさを持たせるため、あるいは難燃性を付加するために、フタル酸エステルや有機リン酸エステル(OPEs)といった添加剤を使用していることが指摘されています。さらに、マスクには重金属、PFAS、揮発性有機化合物(VOC)などの他の化学物質も含まれています。
ONHEALTHの研究によると、異なるタイプのマスクで検出された可塑剤の平均濃度は、外科用マスクで7.27マイクログラム、再利用可能なマスクで8.61マイクログラム、KN-95マスクで11.0マイクログラム、FFP2マスクで13.9マイクログラムでした。
吸入シミュレーション試験
マスクから放出される可塑剤の量を調べるために、研究者たちは紙粘土で作ったダミーの頭部を使用し、人間の呼吸を再現する吸入実験を行いました。その結果、人体の呼吸を模倣した高温環境で、可塑性添加物の放出量が増加することがわかりました。「この実験で使用した高温環境は、可塑性添加物が最も多く放出される最悪の状況を再現しています」と研究者たちは述べています。
マスクから放出される化合物の量は、化合物やマスクの種類によって大きく異なり、0.1~95%の範囲で変動しました。
「特に、OPE(有機リン系難燃剤)は平均で1.0%の放出率を示し、フタル酸エステル類は1.2%の放出率を示しました」と研究者たちは指摘しています。
放出率が最も高かったのは外科用マスクとFFP2マスクで、それぞれ3.9%と4.8%の放出率が確認されました。再利用可能なマスクは最も放出率が低く、平均で0.6%でした。KN-95マスクの放出率は1.2%でした。特に、ある外科用マスクでは、潜在的な内分泌撹乱化学物質であるアセチルトリブチルシトレートが95%も放出されていることが確認されました。
マスクは「新たな暴露経路」
研究で調べられた特定の化合物について、研究者たちは「設定された安全基準を下回っている」と述べています。しかし、可塑剤はマスクだけでなく、おもちゃ、食品包装、衣類、化粧品、掃除用品など、日常生活で私たちが頻繁に接する様々な製品にも広く使用されています。
研究者たちは、フェイスマスクについて「室内外での吸入、皮膚からの吸収、食事からの摂取など、他の主要な暴露経路と合わせて考えると、総合的な暴露量が無視できないレベルに達している」と指摘しています。
「可塑剤への暴露が確認されているため、計算上の数値が低くても、子どもや妊娠中の女性、その他のリスクが高いグループにとっては、遺伝子毒性、免疫毒性、先天性異常のリスクが依然として存在します」と述べています。
可塑剤は妊娠中の女性の血液中にも検出されており、過去50年間で世界的に精子数が大幅に減少していることに関与していると考えられています。これにより、これらの化学物質が生殖能力や次世代の健康に悪影響を及ぼす可能性があるという懸念が高まっています。
(翻訳編集 華山律)
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