「お彼岸」は日本特有の伝統雑節の一つで、古来よりご先祖様に供養を捧げに行くという風習です。毎年春と秋の二つの時期に分かれており、それぞれ春分と秋分の前後3日間、合計7日間で行われます。春分と秋分を「お中日」といい、最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸の明け」と言います。
彼岸は仏様の住む世界
「お彼岸」には「岸の向こう」という意味があり、仏教用語の「到彼岸」(とうひがん)に由来しています。仏教では、人間界を仮の世と捉えており、各種各様の苦しみが満ちているこちらの岸を「此岸」と呼びます。そうした中でも、出家人は苦行を通じて正果(悟りの果)を得ることによって、人間界の輪廻の苦しみから離れ、三界を超えて仏の世界に行くことができます。したがって、「到彼岸」とは、修行を経て仏の世界に到達することであり、人間界という苦海から完全に解脱することを意味します。
先祖への供養に意味が変化
「お彼岸」は元来仏教用語であり、ご先祖への供養や、墓参りとは関係がありませんでした。日本がお彼岸に墓参りを始めた要因の一つは、先祖や亡くなった親族が仏の加護を受け、あの世の冥福を祈り、故人を供養するためだと言われています。その結果、人々は仏教文化と日本古来の先祖供養の習慣を融合させ、「彼岸」を漠然と「あの世」、死後の世界として解釈するようになりました。
お彼岸を迎えるために、仏壇や仏具を清掃し、花や供物を捧げます。この期間やお中日には、家族が一緒に墓参りに行き、故人を偲ぶことが恒例となりました。
「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは?
お供え物の「ぼたもち」と「おはぎ」ですが、基本的に同じもので、食べる時期が異なります。「ぼたもち(牡丹餅)」は牡丹の季節、春のお彼岸に食べ、「おはぎ(お萩)」は萩の季節、秋のお彼岸に食べます。そして、夏には「夜船(よぶね)」、冬には「北窓(きたまど)」と呼ばれます。
秋のお彼岸は、小豆の収穫期とほぼ重なり、収穫したての柔らかい小豆を粒あんにします。点々と散るその粒あんが、小さな萩の花のように見えることから、「おはぎ」の名がつけられました。
「おはぎ」は餅の一種ですが臼でつかず、ご飯をすりつぶして作るため、「ぺったんぺったん」と餅をつく音がせず、お隣さんに気づかれないぐらい静かに作れるため、江戸時代には「隣知らず」とも呼ばれていました。
春のお彼岸は、冬を越した小豆を使うことになりますが、皮が固いため、そこで皮を取り除いた小豆を使い、こしあんができます。
お彼岸とお盆、その違いは?
「お彼岸」は、彼岸と此岸の距離が最も近づく期間とされ、この時期に祖先への供養を捧げます。一方、「お盆」は、毎年先祖の霊を彼岸から此岸に迎え入れて供養します。中国から伝来した仏教に基づいた「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の風習と合わさって、日本独自のお盆が生まれました。
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