「アテナイの学堂」
この巨大な壁画には、プラトンやアリストテレス、ソクラテス、ピタゴラスなど50人の著名な思想家や哲学者たちが登場しています。中心に位置しているプラトン(左)とその弟子アリストテレス(右)はまさに西洋哲学の礎です。
プラトンは天を指し、「我々が見ているこの絶えず変化している世界は、更なる高い次元の世界の投影である。その世界は現実であり、善と美に溢れ、永久不変である」という彼の理論を示しています。プラトンにとって、あの脱俗超凡な世界こそ現実であり、全ての真理と美、正義と智慧の源なのです。
プラトンが手に持っている自著『ティマイオス』は、彼の宇宙観を示し、アリストテレスと異なった意見を物語っています。
隣のアリストテレスの掌は下を向き、彼の実践的な倫理学の基礎を暗示しています。彼は「唯一の現実は我々が今、目に見え、手に触れているーーまさにプラトンが排除した世界だ」ということを提唱しています。
アリストテレスが持っている自著『ニコマコス倫理学』は、正義や友情、政府などの人類社会の要素を強調しています。
プラトンの横に集まっているのは皆、彼の理論に賛成している代表人物たちです。一方、アリストテレスの横に集まっている人物は皆彼を擁護しています。
この壁画の「中央消失点」はプラトンとアリストテレスの間に設定されており、建物の外壁や床の模様をたどっていくと線でつながっている様子が分かります。また、ラファエロはルネサンス期の代表的なスフマート技法(深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法)や、精確な人体解剖学を用い、そして、それぞれの人物の感情をも描き出しました。
また、「ルネサンス期の三巨匠」の他の2人、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロもこの壁画に登場しています。レオナルドはプラトンとして、ミケランジェロはヘラクレイトスとして階段の下で物事を考えこんでいます。そして、ラファエロ自身も最も右側に立ち、こちらを見ています。
ミケランジェロの弟子ジョルジョ・ヴァザーリは、ラファエロの芸術における造詣は、年上のミケランジェロと同等と言っても過言ではないと考えています。
ラファエロはまさに「2倍輝いて燃える火は、半分の寿命だ」(the light that burns twice as bright burns half as long)という名句のように、わずか37歳でこの世を去りましたが、しかし、彼の輝かしい生涯と西洋文明の発展への大きな貢献は、歴史の潮流に流されることなく、永遠に称え続けられていくでしょう。
(完)
(翻訳編集 華山律)
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