このほど、15年ぶりに米国心臓協会(American Heart Association、AHA)が「心臓血管健康飲食ガイドライン」を更新し、10項目にわたる健康飲食モデルをリストアップしました。
実生活に合っていてこそ「生きたガイドライン」になる
世界保健機関(WHO)が2020年に発表した世界の死因のトップ10に、冠動脈心疾患(冠動脈疾患とも呼ばれる)がランクインしました。
毎年、冠状動脈性硬化症で死亡する人は、世界の総死亡者数の16%を占め、しかも人数は継続して増加しています。なお脳卒中は死亡原因の第2位で、総死亡数の11%を占めています。
今回示された「心臓血管健康飲食ガイドライン」に基づき、日常生活の中でとる食事を改善することは、人生の全ての段階において、心臓病と脳卒中のリスクを減らすのに役立ちます。
台湾の高雄市にある宇平クリニックの院長で心臓内科医である劉中平氏は、今回のガイドライン改正には「二つの利点がある」と言います。
一つは「菜食主義者にも適用できること」。もう一つは「実際の生活により近づいたこと」です。
米国心臓協会は以前、地中海料理を理想的な食事として採り上げ、ナッツ、サラダ、サーモンなどを食べるように奨励しました。これについて劉中平氏は、地中海料理の健康効果は評価するものの「現代人は忙しすぎて、それを実際に作るのは難しい」と指摘します。
「私(劉)も、中年になって食事を気にするようになりましたが、忙しい毎日の中で、自分で調理することは本当に難しいです」
今回のガイドラインによる具体的な飲食へのアドバイスは、20~60歳の外食中心のサラリーマンにぴったりだと劉氏は言います。
10項目の心臓保護の飲食方法を大公開
「心臓血管健康飲食ガイドライン」は、心臓の健康によい食事のパターンをリストアップしています。その中から、要点となる10項目をご紹介します。
1、健康体重を維持する
肥満は心血管疾患の原因の一つです。規則的な運動は健康な体重を維持し、カロリー摂取のバランスを保つことができます。
2、果物や野菜を多く食べる
果物や野菜を多く食べることで摂取する栄養は、サプリメントで補給する栄養より優れています。
現代人の食事は、食物繊維が不足しています。食物繊維は、腸の健康に良いだけでなく、心血管にも良いのです。2014年に英国の医学誌『British Medical Journal』に発表された研究には、野菜と果物からの食物繊維摂取量が増加すると、心血管疾患と冠状動脈性硬化症のリスクが安定的に低下することが示されています。
3、「全粒穀物」または「全粒穀物で作られた食品」を選択する
玄米、全粒粉パンは栄養を多く含む上、精製されたデンプン質より優れています。
4、良質なタンパク源の選択
植物性タンパク(ナッツ類と豆類)、魚介類、低脂肪または脱脂肪の乳製品、脂肪の少ない赤身肉や鶏肉を優先します。一方、脂肪の多い獣肉(牛、羊、豚)と加工肉は制限します。
コレステロールを気にしてシーフードを食べない人もいますが、劉中平氏は「イカの内臓、魚卵、エビの卵、エビの頭などを避ければよく、貝類やエビの肉、魚肉は安心して食べられます」と言います。
また劉氏は、「魚介類を調理するには、油で揚げたり、焼いたりしないことが大切です。蒸しものや、水煮にするのが一番です」と助言します。
中国料理のメニューには、魚のから揚げがよくあります。欧米人は魚のフライが好きで、日本人は魚を焼きます。このような高温調理法は魚油の利点を生かすことができない上、油が酸化して変質することもあります。調理法として煮魚は問題ありませんが、醤油など調味料の量には気をつけましょう。
5、液体植物油を使用する
調理用の油はオリーブ油、ヒマワリ油などの液体植物油を中心にします。熱帯性植物の油(パーム油やココナッツ油)および動物性の油(ラードや生クリーム)は避けるべきです。熱帯性植物油と動物性油は心臓血管の健康に良くありません。また、市販されている多くのビスケットには、生クリームやパーム油が使われています。
6、加工食品は「低加工」のものを選ぶ
燻製、塩漬け、防腐剤を添加した加工肉など、加工程度の高い「超級加工食品」は避けてください。加工食品を買うにしても、なるべく「加工程度の低い食品」を選んだほうが健康への心配が少なくて済みます。
劉中平氏は、「我われ医療従事者も、すぐに空腹になるので、ついカップラーメンやソーセージを買って食べてしまいます。ただし、これらも塩分や添加物の多い加工食品ですので、本来は避けるべきなのです」と反省を込めて言います。
7、砂糖入りの飲料や食品を減らす
砂糖は体の慢性的な炎症を起こします。そのため肥満、糖尿病、心臓疾患など様々な慢性疾患の原因になります。
8、減塩食または無塩食を選択する
毎日の食事でナトリウムを過剰摂取すると、高血圧を招き、心血管疾患および慢性腎臓病のリスクが高まります。
9、飲酒の制限または断酒
初期の研究では、1日に1~2杯のワインを飲むのは心臓に良いとされていました。しかし、近年の研究によると、多くのアジア人が飲酒後に顔が赤くなるのは、アルコールの代謝が欧米人に比べて良くないためだと分かっています。アルコールの過剰摂取は、がん発生率の上昇にもつながります。
多くの中国人は薬酒を飲む習慣があります。薬酒には高麗人参が多く含まれていますが、その成分は血圧を上昇させますので、高血圧患者はこれらの薬酒を飲むことができません。また薬酒の成分は複雑で、アルコール濃度も比較的高いため、腎臓病や肝臓病の患者にもお薦めできません。
10、どこで食べ物を作っても、どこで食べても、このガイドラインが適用される
自宅での調理でも、レストランでの食事でも、オンラインから出前の注文など、このガイドラインを意識してください。
あなたの心臓に優しい、理想的な食事のパターンに従うことができます。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)
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