見直しましょう「お酢の効き目」人に優しく、室内を清潔にします

日本の近代文学史で「小説の神様」と称賛されたのが志賀直哉でした。その作者に『小僧の神様』という粒よりの短編があります。

秤屋で奉公する少年・仙吉が「食べたことがない鮪のお寿司を、せめて一つだけ食べたい」と思い、勇気をふるって店に入ったものの、手持ちの4銭では足らず、手にしたお寿司を置いて店を飛び出してしまうところは、なんとも切ない場面です。

小説の発表は大正9年。ちょうど氷を使った魚介の冷蔵環境が整ってきた時代であり、江戸期以来の東京の寿司店が大いに発展していた時期にあたります。ただ、この頃の寿司屋さんは屋台形式の立ち食いが多く、小説の仙吉も、そのような店で立ち並ぶ大人客のなかに潜りこんでいます。

寿司、、鮓など、いずれも「すし」と読んでいます。語源的には、酸っぱい味を意味する古語の「酸し(すし)」からきたらしいのですが、ほかに飯(すめし)の短縮語であるという説もあります。

近江の名物である鮒鮨(ふなずし)は乳酸発酵させた「なれずし」で、鮒は食べますが、ご飯そのものを食べる目的にしてはいません。

これに対して、江戸前のにぎりは、なんといっても新鮮な魚介と酢飯の絶妙なハーモニーを楽しむものですので、つかうお米と酢にはこだわります。

食酢は、食材の味を引き立てる調味料であるだけでなく、腐敗防止や保存性を良くする目的でも使われました。そういえば昔、子供の遠足に持たせる「おにぎり」を作るとき、手のひらに酢をなじませてから握るお母さんもいましたが、読者の皆さんの地方では、いかがでしょうか。

実際に、腐敗防止の効果がどれほどあるかは分かりません。ただ、そうした「おにぎり」に込められたお母さんの愛情は、誠にありがたいものだと思います。

酢(す、さく)と酒(しゅ、さけ)は、その発音が近いだけでなく、もとは同類の液体から生じたものと考えて間違いありません。穀物や果実を原料とする醸造酒が、酢酸発酵すると酢になります。それが人類と酢との、劇的な「出会い」でした。

もちろん、アメリカの家庭にも、ケチャップやマヨネーズが特大ボトルで常備されているのと同じく、食酢が必ずあります。

家庭のキッチンにある酢は、第一義的には調味料として使われるわけですが、比較的安価であり、人体に無害で汚れを効果的に落とす家庭用クリーナーとしての用途も、欧米では広く知られています。

むしろ、化学系の洗浄剤が登場する以前は「酢をつかって洗う」が主流でした。
『ナチュラルニュース(NaturalNews)』にも紹介された酢の活用法ですが、食酢をクリーナーとして使用すると、雑菌ウイルスを除去できるだけでなく、キッチン周りの油汚れもよく落とします。

使用済みの汚れた布やスポンジは、酢と水を混ぜたものに一晩浸しておくと、次回の清掃に役立ちます。

窓ガラスを清掃するときも、酢が意外な効果を発揮します。同量の酢と水を混ぜて、柔らかいスポンジで拭いてみてください。拭き掃除につかった酢が余ったときは、さらに重曹を加えて排水管に流すと、下水のつまりを防ぐことができます。

お寿司にもつかうお酢は、世界各地で、こんなことにも役に立っているんですね。
(翻訳編集・鳥飼聡)