植物園で、花と直接会話しながら植物を育てている心優しい升田さんに話を伺いました。
温室の前に一本のバラの木、パープル・タイガーが植わっています。「この子が『水が欲しい、消毒して欲しい』と最初に声をかけたんですよ」と、升田さんは目を細めます。
花がいっぱい咲いている温室に入ると、BGMにクラシックの曲が静かに流れ、ゆっくりとした時間が進んでいました。
花期を過ぎても、色々な洋蘭、バナナ、アセロラなどの花が咲き、マンゴーの実は鈴なりに成っていました。サボテンも元気に生き返って雄姿を現し、花を咲かせています。コーヒーにも白い花がついたそうです。温室が作られてから、はじめての快挙です。岡山市半田山植物園園長も升田さんに脱帽です。
「こちらへ来てごらん。アンネのバラも音楽が大好きのようで、次々と蕾をつけているから」。 一度目は5月に、そして8月と、次々と花が咲いています。スピーカーから流れる名曲に、元気百倍となったのかもしれません。別の株にも蕾がつき、根付いたばかりの挿し木にも蕾が出ています。当面の目標は、どんどん育てて、アンネのバラのコーナーを完成させることだそうです。
「バラがここを切ってというから、そこを切るだけです。本を読んで勉強したわけでもありません。花が教えてくれるんです」
「毎朝、『おはよう、元気か』と声をかけると、あちらこちらで『水が欲しい、根が苦しい、虫がいる、暑い』と返事するから、それぞれに対応しています。ただ、それだけです」
淡々と話される一言一言に、愛情がこもっていました。幸せな花たちもそれに答えて、生き生きと枝葉を伸ばしているようでした。
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