言葉による傷は永遠に治らない【子どもの教育に役立つ物語】

子どものいじめ、自殺、暴力・・・昨今、心の痛むニュースが後を絶たない。生まれてきた時は、誰もが純粋で善良だったはずなのに、何が子どもたちを悪へと走らせるのか。人生には学校の教科書だけからでは学ぶことのできない、大切な価値観があることを子どもたちへ伝えることが重要だ。将来を担っていく子どもたちに、ぜひ読んでもらいたい物語である。

重傷を負った熊が助けを求めて、森の中にある小さな家の前にたどり着いた。

家の主人は、弱っている熊の世話をすることにした。彼は慎重に熊の体に付いた血の痕を拭き取り、傷口の手当をした。さらに、盛りだくさんの料理を作って、熊に食べさせた。主人の手厚いもてなしに、熊は感激した。

夜になって、家にベッドがひとつしかないことを思い出した主人は、熊と一緒に寝ることにした。しかし、布団に入った熊の放つ強烈な異臭に耐えられず、主人は思わず熊をののしった。「おまえはなんて臭いんだ。とても耐えられるものではない。本当に、世の中で最も臭い虫のようだ」

その晩、熊は眠れなかった。ひどい言葉を浴びせられたが、返す言葉もなかった。ただひたすら、夜明けを待った。翌朝、熊は家の主人にお礼を言った後、早々と家を後にした。

数年がたったある日、熊と家の主人は偶然に再会した。「おまえはあの時、とてもひどいケガを負っていたが、もう回復したのかい」と主人は尋ねた。熊は、「肉体的な傷は、すでに癒えました。しかし、心の傷は永遠に治らないものです」と答えた。

(編集・望月 凛)