陰陽の概念は、伝統的な中国社会において、健康から人々の調和に至るまで全てを理解する上での基礎となっています。陰陽の概念は西洋科学よりも数世紀前から存在しており、用語は異なるものの、後の西洋科学によっても物事の本質の二極性は科学的に見出されます。
しかし、西洋と伝統的中国文化の間では陰陽の概念の理解に対して大きな違いがあります。西洋では、多くの人は相反するものは完全に異なるものと考えています。一方、中国文化では、相反するものは補完的で相互依存していると考えられています。
伝統的な漢方医学において陰陽のバランスを理解することは非常に重要で、長寿や心身の健康を促進する治療の基本となっています。
漢方医学に関する最古の本といわれる『黄帝内径』では、陰陽とは宇宙の一般法則および万物の基本原理で、バランスや調和、幸福や健康などをもたらす動的で全体的な体系であり、これは原子から人間の身体、ひいては社会にまで当てはまると考えられています。
最近、筆者の同僚が仕事の愚痴を言っているのを耳にしました。彼曰く、上役は多すぎるのに職員は不足しているとのことでした。
意思決定を下す人材は多いのに仕事をこなす人材が少ないというこの例はよく見られるものです。チームとして機能するには一丸となる必要があり、リーダーとついていく人の両方がいるわけです。従順性は西洋社会では軽視されがちですが、協調性のある関係を築く上で必要不可欠で重要な要素です。従順性がないとチームで議論をしても何も進まない、または、少ない人員で多くの上司からの要求に対応しなければならず、組織運営に支障をきたすことにも繋がるのです。
組織内でも個人でも、行動と思考のバランスが必要なのです。
万物および現象は相対する2つの要素に分別でき、対極の要素なしでは存在しません。陰陽の物理的な具体例としては、電荷の正負や男女、光と闇、火と水、静と動などが挙げられます。
身体の陰陽バランスが取れていないと不調を感じるのが最たる例です。『黄帝内径』では、過剰な陽は熱の元に、過剰な陰は冷えの元になるとされています。病気で高熱がある場合は、体内の陽が高まって陰が低い状態ということです。陰陽の均衡が戻ると熱は下がる、ということです。
ところが、西洋的価値観では熱は免疫反応です。身体は酸化の工程を利用して熱を生み出し、病原体を攻撃するのです。
漢方は陰陽の原理で健康を維持・改善するだけでなく、陰陽のバランスを理解することで私たちの生活のあり方や習慣にも影響を及ぼします。もちろん私たちは働かなければなりませんが、楽しみや人生の意義を持つために遊ぶことも大切です。生きることとは陰陽のバランスであり、それを失念すると悪影響を被ることになるのです。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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