小さい川と大きな砂漠

【大紀元日本6月6日】小さい川が、高山から多くの村落や森林を抜けて、最後に砂漠に辿りついた。たくさんの困難をのりこえてきたので、砂漠もまた越えられると思っていた。しかし、何度試みても水は砂漠に吸い込まれてしまう。どうしても乗り越えることができない。「もしかすると、こういう運命にあるのかもしれない。言い伝えで聞いたことのある広大な海までは到底流れ込むことはできない」と小さな川は意気消沈した。

その時、「もしそよ風が私を越えることができるなら、あなたにもできるはず」と大きな砂漠の声が聞こえてきた。

「そよ風は砂漠を飛べるけれど、私にはできません」と、小さな川は不満げに言い返した。

「自分にしがみついているから、失敗してしまうんですよ。あなた自身を変えて、そよ風の中に蒸発すれば、砂漠を飛んで、広大な海に辿り着けますよ」と大きな砂漠は教え諭した。

小さな川は、自分自身を変えるなど考えたこともなかった。そうなると、自分がなくなってしまうのではないかと思い、 どうしても受け入れることができなかった。

「そよ風が水分を含んで砂漠を飛べば、 空中で水気を放ちます。水気は雨水に変わり、 雨水は川となり、流れていきます」と大きな砂漠は根気よく説明した。

「それでも、まだ本当の私なの?」と、小さな川は不安そうに尋ねた。

「川であろうと、空気中の水分であろうと、本来のあなたに変化はありません。自分が川であることにしがみつくのは、自分の本質を知らないからに過ぎません」と大きな砂漠は答えた。

小さな川は、ぼんやりと昔のことを思い出した。川になる前は、そよ風に連れられて、内陸のある高山の中腹まで飛んできたのだった。その後、雨水に変わり、最後に今の自分になった。ようやく、小さな川は勇気を出して、そよ風の中に飛び込んだ。そよ風に連れられて砂漠を飛び越え、大海を目のあたりにした。これは、人生のある段階を意味するものだった。

この小さな川のように、人生の魔難を乗り越えねばならない時は、自分自身の殻を破り、執着心を捨てる勇気と智慧が必要だ。

あなたの本質は何ですか…?

あなたが手放せないことは何ですか…?

あなたが真に求めるものは何ですか…?

(翻訳編集・李頁)