【大紀元日本4月19日】先日、我が子の4年生の最後のイベント、「1/2成人式」に出席した。企画から、プログラム作り、会場の飾り付けや司会まで、すべて10歳の子供たち自身が主体になって行ったことにすべてに感心しきった私は、1人ずつのスピーチ、「私の夢」を聞いているうち、笑いと共に、なぜか目の奥からジーンとこみあげてくるものがあった。
「自由でいいな、正直でいいな、『立派』な夢じゃなくていいな」と思ったのは中国人の私だけかもしれない。定番の野球選手にケーキ屋さん、ペットショップの店員に、レーサーや棋士まで、どの子ものびのびと自分の思いを正直に語っていた。
中国では見られない光景だ。4年生どころか、1年生に聞いても、きっとこれより遥かに「大人」っぽい回答が返ってくる。中国では子供達の就きたい職業の第1位は「実業家」らしい。また、「賄賂がもらえる幹部になりたい」と本音を漏らしてしまった子供の発言もネットで話題になっていた。
中国の子供も本音はサッカー選手や花屋さんなどになりたい。しかし、それを口にすると大人に冷やかされる。超格差社会を懸命に生きている親達の価値観は画一している。子供の興味や関心よりも、金持ちになってもらいたい一心である。スポーツを頑張っても、プロになれる人はほんの一握りだから、親に軌道修正されることが多い。実は筆者も子供の時、「幼稚園の先生になりたい」と言ったら、先生や親が驚いたことは、今も記憶に新しい。こうして、子供たちの具体的な「好きなこと、憧れのこと」が、大人の価値観に染められ、「金持ちになりたい」という共通の目標から、それに一番近い「実業家」や「幹部」が人気になった訳だ。
もっと深刻なことは、一度嘘で答えた「模範回答」が認められると、嘘を付いていることさえもそのうち忘れてしまい、また無意識のうち、次も「模範回答」に近づけるよう、嘘を付いてしまうことだ。
中国には「模範回答」がたくさんある。大学入試に出る思想を問う作文に、要求される「模範回答」の論点でないと、零点とされる。アスリートがメダルを取ると「国に感謝する」のが模範回答で、うっかり「両親の生活を楽にしてあげたい」と正直にコメントしたアスリートには「やり直し」が攻められる。炭鉱事故の生存者も助けられるや否や「政府に感謝」を口にする…
嘘が要求される社会では、ごまかしが横行し、対外的には信用が得られない。反対に、日本のように自分に正直な子供たちが大人になった時も、正直で誠実な大人になり、各々の好きな道を真摯に極めることで、高度で信頼される社会を築くことができる。
因に、中国人の私はどうも少しずつ自分の価値観を子供に刷り込ませたようだ。「大学の先生」という我が子の立派な夢はみんなの中で少し浮いてしまっていた。しかし彼の理由はあくまでも日本人らしい。教えることが好きで、大好きな実験がいっぱいできるから。そして今日も彼は夢に向かって、科学読本に夢中だ。
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