【大紀元日本8月18日】国内で約50種類、世界で約2000種類のホタルが知られています。ホタルには陸生と水生のホタルがあります。国内のホタルのほとんどは陸生のホタルですが、日本の初夏の風物詩を彩るゲンジボタル(体長約2cm)やヘイケボタル(体長約1cm)は水生のホタルで、世界でも数少ない種類に属します。日本の自然環境の指標となるホタルです。
人々の心を和ませたホタルの初夏の乱舞が終わると、真夜中過ぎから明け方までの夜陰に抱かれてホタルは産卵します。清らかな水が穏やかに流れ下り、上陸に適した軟らかな湿った土の岸辺があり、木陰の安らぎが保全されている里山全体が、ホタルの光の故郷です。ゲンジボタルの一生は、日の当たらない水辺のコケの中で始まります。コケは清らかな水の友達です。コケの湿潤な緑が、ホタルの卵の隠れ家です。緑陰の伊吹を吸って、卵は孵化します。ゲンジボタルの幼虫は、カワニナという巻貝を餌にして育ちます。巻貝=螺旋のいのちを織って、明滅する光の夢を紡ぐのです。
蛍の里山(大紀元)
カワニナは美しい水の中に生息しています。カワニナが生息できる澄み切ったせせらぎの環境で、ホタルの幼虫は脱皮(平均5回、約10ヶ月)を繰り返して大きくなります。春に水温が上昇し、4月~5月にかけて雨が降り続く日が続くと、闇の光の中を川岸へと移動し上陸の準備を始めます。渓流のせせらぎの水から、大地の懐へと勇気をもって進むのです。
ホタルは雨乞いをする昆虫です。なるべくなら雨の降る日、でなければ雨が降った後の日を選んで上陸します。適度な湿り気と通気性の良い柔らかい土壌の浅瀬(約1~6㎝)に、土繭(まゆ)と呼ばれる小部屋をつくり、その中で過ごします。約40日経つと蛹化し、昼夜を分かたず神秘的に光輝いています。
ホタルは大好きな夜の光を集め、分泌液で拵えた卵殻のような土の衣装を纏います。それが土繭です。蛹になることは、再び卵の状態を過ごすことです。ホタルの蛹は土繭の中で、やや丸くなって卵形の夢を紡ぐのです。蛹になって10日ほどすると羽化が始まり、雨に湿った柔らかな土から這い出し地上へ飛び立ちます。成虫となって地上の夕闇の光の中に身を躍らせると、死はもう近いのです。明滅する光の希望をコケの上に産卵し、卵形の夢を遺してあまりにも短い(約10日間)成虫の生を終えるのです。
ホタルの光の秘密
ゲンジボタルが発するのは、「冷光」と呼ばれる光です。熱エネルギーのほとんどない光です。地球を暖める太陽のような光ではありません。
ホタルは夜行性ですから、昼間はじっとしています。ホタルにとって「昼は死の世界であり、夜が生の世界」です。ホタルが放つのは、夜陰を満たしている光です。ホタルは夜の光を凝縮してこの世に運んできます。冷光は闇を紡いだ光の投影に他なりません。土という昼間の光をさえぎる繭(土繭)で羽化に備える蛹のホタルは、闇の光で羽を織るのです。
太陽のようにはっきりと輝く光は、宇宙の全てを隈なく照らし出すことは出来ません。喩えて言えば、ホタルの光を限りなく透明に希釈した光が、宇宙の果てに至るまで隈なく満たしています。宇宙の闇を煌々と照らし出すのは、ホタルのような果敢ない光です。
ホタルを愛する人に、ホタルの光が点火されます。昼の人工世界の闇の光を集め、甘い水を造ってホタルに与える人が、地球の未来の環境を良くしていく事ができます。人工自然の里山で人間の心的努力を祝して、四季のホタルの光が乱舞する日は必ずやってきます。
ゲンジボタル(大紀元)
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