【大紀元日本3月7日】チベットは未だ多くの人にとって未知の世界である。このほど「博訊ネット」(2月5日)に「チベットの十大不思議」と題する記事が発表されたのでここに紹介する。
1.野人
チベットの「野人」については、これまで議論が絶えず、「世界4大ミステリー」の一つに数えられている。中国では、1784年にすでに野人に関することが文献に記録されている。また、近年、ヒマラヤでしばしば野人が目撃されており、女性の野人が地元の男性をさらって子供を出産したという情報もある。現在、調査隊が東チベットに入って調査を行っているが、未だ野人は発見されていない。
2.赤雪
ヒマラヤの5000メートル以上の氷雪の表面にしばしば、赤雪かと思わせるほどの赤い斑点状のものが現れるが、実はこれは、氷雪藻類のなせる業である。氷雪藻類は、永久氷雪地域に広く分布しており、耐寒性に富み、零下36度でも死なない。それらの藻は赤い色素を持っているため、繁殖すると氷雪の表面が赤く見えるのである。
3.祈祷師
原始宗教の観念が根強く残っているチベット族の先住民たちは、天上、地上、水中のどこにでも神がおり、そのうえ、この世の全てのものがそれらの神の思し召しのままに存在すると考えている。人類が発展する過程で、人々は絶えず、客観的事物や一部の自然現象をコントロールしたいと考え、祭祀や巫術(ふじゅつ、シャーマニズム)活動を行い、それに伴って祈祷師が現れた。チベット族の原始宗教の祭祀を司る祈祷師は、神とコミュニケーションを取ることができ、民意を神に伝え、神の思し召しを人間に伝えることができるとされる。彼らは、吉凶禍福を預言し、災難や病を取り除くことができる。さらには、占いをしたり、死者の魂を呼び戻したり悪魔を追い払ったりといった様々な巫術を行うこともできる。彼らは、人と神の橋渡し役で、高い声望を得ている。
しかし、時代の流れにつれて、現在では、祈祷師たちの服飾、道具、呪文、巫術の方法など、ほとんど何も分からなくなっている。かなり辺鄙な地ではまだ、多かれ少なかれかなり原始宗教の祈祷師に近いものを残しているのかもしれないが、今後の調査を待たねばならない。
4.虹化
「虹化」とは、得道した高僧が亡くなったときに現れる神秘的な現象である。非常に高い次元にまで修煉した高僧が亡くなると、その肉体は虹に変化(へんげ)し、その後、空行母(ダキニ)の浄土である無量宮に入ると言われる。
5.エベレスト頂上の旗雲
よく晴れたとき、エベレスト頂上に旗状の乳白色の雲が浮かぶが、これをエベレスト頂上の「旗雲」という。旗雲は、対流性の積雲からできており、それがはためく向きや高度から、頂上付近の風の強さを知ることができる。旗雲が上へはためいていれば上空の風は弱いということであり、下へはためいていれば風が強いということになる。もし横向きなら風力は9級くらいである。このため、エベレスト頂上の旗雲は、「世界一高所にある風向計」とも言われる。
6.象雄
象雄は、「鵬(おおとり)の地」を意味し、史書に「単同」と記載されており、チベット高原で最も早くに文明の開けた中心である。考古学の研究ならびに史書の記載によると、象雄は、紀元前10世紀にチベット高原に出現し、吐蕃王朝よりも早く唐朝と交流があった。紀元6~7世紀ごろ、象雄は、牧畜を主とし、農業も行っていた。長い歴史を持つ象雄は、優れた文明を生み出した。独自の象雄文字を作っただけでなく、チベットの伝統土着宗教である苯教(ボン教)の発祥地でもあり、後の吐蕃王朝ならびにチベット文化全てに大きな影響を与えた。像雄王朝は、全盛期には強大な軍事力を持ち、その勢力はチベット高原の大部分の地域ならびに青海、四川の一部、さらには西部のカシミールやラダクにも及んだ。ところが、吐蕃王朝が次第にチベット高原で勢力を増し、紀元8世紀には象雄は完全に吐蕃王朝に征服された。それ以来、象雄王国とその文化は忽然と姿を消し、その文字文献や宮殿の遺跡も未だ考証されておらず、謎のままである。
7.「ケサル」の語り部
『ケサル王伝』は、チベット族に伝わる有名な長編英雄叙事詩で、その原始的な雛形が今日では100編あまりに増えた。『ケサル王伝』の伝承形式には、歌い語りと文字による記録があるが、歌い語りが主であり、「説唱芸人」と呼ばれる語り部によって吟遊しながら代々語り継がれていった。
多くの説唱芸人の中でも、数多くのケサルを歌い語ることのできる優秀な語り部は、往々にして自らを「神授芸人」と称する。つまり、彼らが歌い語る話は神が授けてくれたものだということである。「神授芸人」は、その多くが、幼年時代に神やケサル大王の思し召しを受ける夢を見、その後病気になる。そして、病中または病後にラマの祈祷を受けることによって、ケサルを歌い語る能力が開かれ、それ以来歌い語れるようになったと言う。
チベット地域には、10歳あまりの文字も知らない子供が病後、あるいは目覚めてみたら、数百万字もの長編叙事詩を歌い語ることができるようになっていたという事例があるが、これは未だ説明のしようのない神秘的な現象である。
8.古格(グゲ)王国
9世紀中ごろ、吐蕃王朝の第9代ランダルマ王が暗殺され、その曾孫がアリ地区に逃げ延びた。10世紀になって、その末裔がグゲ王国を建て、その後700年近くの長い歴史の中で輝かしい文明を作り上げた。1630年、ラダク人が侵入し、グゲを滅ぼした。しかし、文献の記載によると、戦争時の虐殺や略奪はグゲ文明を滅ぼすには足りないものであったが、グゲ文明はマヤ文明と同じく、忽然と姿を消したのである。今日の遺跡付近には10数家族が暮らしているが、彼らは別にグゲの末裔ではない。ならば、当時10万はいたとみられるグゲの人々は如何にして陰も形もなく姿を消したのか。
現在、広大なグゲ王国の遺跡、神秘的な「古格銀眼」(銀の眼をはめ込まれた銅の仏像)、無頭ミイラ洞窟(頭のないミイラが山積みされた洞窟)、無数の珍宝などが考古学者たちを引き付けて止まない。しかし、グゲ文明がなぜ忽然と姿を消したのかは未だ謎のままである。
9.伏蔵
伏蔵とは、苯教(ボン教)やチベット仏教の教徒が、災難を受けた際に隠しておき、その後再び掘り出された経典のことで、書蔵、聖物蔵、識蔵に分けられる。書蔵とは経書で、聖物蔵とは仏具や高僧の遺物である。最も神秘的なのが識蔵である。識蔵とは、人々の意識の奥深くに埋め込まれた経典のことで、ある経典や呪文が災難に遭い、そのままでは伝承できなくなったとき、失われるのを防ぐため、神がある人の意識の奥深くに埋め込むと言われる。再び伝え広める条件が整ったとき、ある種の神秘的なお告げによって、経文を埋め込まれた人(字を知らない農牧民であることもある)が、それを唱え出し、文字に記録されることになる。これがすなわち伏蔵の謎である。
10.香巴拉(シャンバラ)
シャンバラは、シャングリラとも言われ、「安楽」を意味する。そこは、仏教で言われる神話世界であり、時輪教(カーラチャクラ)の発祥地でもある。シャンバラが実在したかどうかについて、多くの人は疑わしく思っている。一方、仏教学界では、シャンバラはフィクションのユートピアであると考えている。
チベット文字の史書には、シャンバラのことが次のように詳細に記されている。シャンバラは、雪山中央の西端にあり、八葉の蓮の花のような円形をしている。周囲は雪山に覆われ、山頂から麓の森まで、様々な花や薬草が生えている。大小の湖が星をちりばめたように点在し、青草や木々が生い茂り、修行の聖地があちこちにある。その中央には華麗で堂々としたカラーパ宮殿が聳え立つ。宮殿の中央には、各王の寝室と玉座があり、王たちは多くの大臣や軍隊を抱え、獅子や象や駿馬を多数持っていた。ここは、物産が豊富で、人々は安穏に楽しく暮らし、王や大臣から庶民までみな仏法を敬虔に信仰した。
しかし、シャンバラが果たして実在したかどうかは、依然謎である。
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