【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

除去食ダイエットが時に逆効果になる理由

食物不耐症を特定するために除去食ダイエットを始める際のストレスが、かえって消化器症状を悪化させる可能性があります。ただし、感情面の健康に対処することで、症状の改善が期待できる場合もあります。

さらに、多くの食品を除去しても症状が改善せず、むしろ悪化しているように見える継続的な食物不耐症には、より微妙な原因が関与している可能性があります。

栄養士としてのキャリアの最初の20年間、ウェンディ・バス氏は、除去食ダイエットを「症状に関係する食品を特定するためのゴールドスタンダードな手法」として用い、クライアントが消化器系の不調の原因を突き止める手助けをしてきました。

「皆さん、非常に制限された食事をしながら私のもとに来て、『それでも反応が出ています。いったい何が起きているのでしょうか?』と尋ねてくるのです」と、バス氏はエポックタイムズに語っています。

多くの場合、適切に用いれば、除去食ダイエットは解放感をもたらします。問題のあると思われる食品を1つ以上取り除き、その後、ゆっくりと再導入していくことで、ガス、膨満感、下痢、便秘といった消化器症状を引き起こしている食品を特定することが可能です。

しかし、一部の人にとっては、除去食ダイエットがかえって不必要な食事制限をもたらし、食品への恐怖心を増幅させ、結果的に症状を悪化させることもあります。

バス氏はこの現象を「条件付き食品回避および感受性トラップ(C-FAST)」と呼んでいます。これは、過去10年間で彼女の臨床現場において大きな課題となっている問題です。食事の制限と症状の悪化という悪循環が、除去食ダイエットの本来の目的、つまり、症状のない状態で食事を楽しめるようになることを損なってしまうのです。
 

食品制限への過剰な警戒心

除去食ダイエットは時間がかかり、混乱を引き起こす可能性があります。このような食事法は、食品と消化器症状に対する過剰な警戒心やストレスを生み出し、増幅させることがあると、バス氏は指摘しています。

「過剰警戒」とは、神経系が常に「戦うか逃げるか」のモードに固定され、危険を常に探し続けている状態を指します。

多くの場合、このストレスや恐怖は無意識のうちに起こっているものです。

バス氏は、恐怖が関与していることを自覚することが、状況を変える鍵になると述べています。悪循環に陥っていることを早期に認識できれば、それだけ早くそこから抜け出すことができます。

以下は、「C-FAST(条件付き食品回避および感受性トラップ)」に陥っていることを示す警告サインです:

  • 食品の危険性について頻繁に考えたり、調べたりしている
     
  • 食品を食べるときに緊張や不安を感じる
     
  • 症状に過度に注意を払ってしまう
     
  • ダイエット中に食品を再導入することを拒否している
     

客観的に評価することの大切さ

除去食ダイエットには、心身の両面からのアプローチが重要です。最終的には、本当に症状を悪化させる食品だけを取り除くことが理想です。

「最終的には『この食品を避けると本当に体調が良くなる』と感じるかもしれませんが、その判断が、読んだり聞いたりした情報に基づく“恐怖”ではなく、客観的な根拠に基づいていることが大切です」と、バス氏は述べています。「そして、以前制限していた多くの食品を再導入できるようになれば、おそらくそれらの食品に対する回避行動には“条件付け”が関与していたということなのでしょう」

「条件付け」とは、ある経験が特定の結果を引き起こすという学習プロセスのことです。たとえば、乳糖不耐症について繰り返し情報に触れることで、それに関連する生理的な反応が起こる可能性があります。バス氏は、誰もがこの条件付けの影響を受けやすいと指摘しています。

この条件付けを避けるために、彼女は以下のような対策を提案しています:

  • インターネットでの過剰な情報収集は控える
     
  • 信頼できる食品リストに従う
     
  • 食品について考える時間を減らす(例:1週間の食事を事前に計画する)
     
  • 症状の原因として、食品以外の可能性も考慮する

バス氏が支援したあるクライアントは、当初は食品を再導入することができませんでした。しかし、食品との関係は劇的に改善されました。

その女性は、以前は友人とカフェに行くたびに「何も食べられない」ということに苛立ちを感じていました。現在では、代わりに一緒に散歩をするようになりました。

「彼女はもはやそのことで悩んだり戦ったりしていません。食品は、もはや彼女の人生におけるストレスの源ではなくなったのです」と、バス氏は語っています。
 

食品制限の定義

除去食ダイエットの過程で生じる「恐怖」は、人々が特定の食品を避ける原因となり、これが症状の複雑化を招くと同時に、従来の食品制限に関する認識と矛盾する場合があります。その結果、臨床医が根本原因を特定するのが難しくなることがあります。

「制限的摂食」は、臨床的には回避・制限性食物摂食障害(ARFID)と診断されることがあり、幼少期からの食に対する無関心に起因しています。回避・制限性食物摂食障害の主な症状には、食欲不振、窒息や嘔吐への強い恐怖、食べ物の味・質感・におい・見た目に対する嫌悪感などが含まれます。

回避・制限性食物摂食障害は摂食障害の一種として分類されており、歪んだ身体イメージや、身体に対する過剰な関心が特徴です。そのため、バス氏は「C-FAST(条件付き食品回避および感受性トラップ)」で悩む患者をそのまま回避・制限性食物摂食障害に分類するのは適切ではないと述べています。

ただし、バス氏はC-FASTと回避・制限性食物摂食障害には共通点もあると指摘しています。特に、どちらの状態にある人々も「不安」を抱える傾向が強い点です。

2024年に『Journal of Eating Disorders』に掲載された研究では、回避・制限性食物摂食障害を持つ42人の成人を対象に調査が行われ、この障害に関する理解が進化していることが示されました。研究結果によれば、回避・制限性食物摂食障害は多様な年齢層や、他の精神疾患を持つ成人にも影響を与える可能性があることが明らかになりました。

調査対象者の半数以上が不安障害や気分障害を抱えていたほか、注意欠陥障害、自閉症スペクトラム障害、トラウマ、強迫性障害、さらにクローン病やセリアック病といった消化器系の慢性疾患を抱えている例も確認されました。

これらの結果は、回避・制限性食物摂食障害が単なる精神的な健康問題ではなく、食品制限に関わる心身の複雑な性質を示しているといえます。バス氏は「感情的な要因が関わっているからといって、それが身体的症状を否定するものではない」と強調しています。
 

食品に対する穏やかな姿勢を築く

除去食ダイエットの最終的な目標は、除去期間後にできるだけ多くの食品を再び食事に取り入れることです。しかし、それが常に可能とは限りません。バス氏は今では、クライアントが再導入できた食品の数によって成功を評価することはしていません。その代わりに、食品について「考える」「調べる」「心配する」時間を減らしながら、食品に対して前向きな感情を持てるよう支援することを目指しています。

マドセン氏は、クライアントが食品反応における感情の役割を自覚しているかどうかにかかわらず、マインドフルネスの実践を取り入れることを勧めています。

バス氏は、簡単なリラクゼーション習慣が、食品とのより健全な関係を築こうとする人にとって大いに役立つと付け加えています。

たとえば、以下のような習慣があります:

  • 毎日同じ時間に食事をとる
     
  • ゆっくりと、よく噛んで食べる
     
  • 毎食前や消化器に不快感を感じたときに、ゆったりとした腹式呼吸を数回行う
     
  • リラックスできる自分なりの方法を見つける

長年の経験を通じて、バス氏は、除去食ダイエットによって体調が改善されたと感じる理由が、必ずしも特定の食品を取り除いたことによるものではないことに気付きました。むしろ、健康的な食習慣の導入、プラセボ効果、介入と関係なく起きる自然な改善、あるいは医療専門家から受けるサポートなどが関係している可能性があります。

「多くの場合、人々は物理的な原因を探しています。彼らは『なぜこの食品が自分を苦しめるのか』という説明を求めているのです。でも、恐怖が関わっているかもしれないと伝えると、クライアントは『それなら本当の食品感受性ではないのでは』『自分が症状を大げさに感じているのか』『作り上げているのでは』と思ってしまうことがあります」と、バス氏は語ります。

「それでも、これらの症状が“本物”であることを伝えるのは、非常に困難な挑戦でもありました」

(翻訳編集 日比野真吾)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。