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宇宙史上最大級の爆発現象「銀河核極限突発現象」を発見

アメリカ・ハワイにあるケック天文台で観測されたデータにより、天文学者たちは宇宙誕生以来、これまでに知られている中で最も大きなエネルギーを持つ爆発現象を発見しました。

ケック天文台が6月4日に発表したニュースリリースによると、天文学者たちはこの新たな現象を「銀河核極限突発現象(ENT)」と名付けました。これらの異常な現象は、超大質量ブラックホールが、あまりに近づきすぎた大質量恒星(太陽の質量の3倍以上)を引き裂くことで発生します。この際に巨大なエネルギーが放出され、遠く離れた地点からでも確認できるといいます。

この研究を主導したハワイ大学天文学研究所の博士課程学生、ジェイソン・ヒンクル氏によると、過去十数年にわたり、恒星が潮汐破壊現象(tidal disruption event)によって引き裂かれる様子は観測されてきましたが、銀河核極限突発現象はこれまでにない現象であり、その明るさは通常観測されるものの約10倍にもなると述べています。

ヒンクル氏は次のように語っています。「銀河核極限突発現象は、一般的な潮汐破壊現象よりもはるかに明るく、しかも数年間にわたって輝き続けます。その放出エネルギーは、これまで知られているどの超新星爆発よりも大きいのです」

これら銀河核極限突発現象が放つエネルギーは、まさに前例のないものでした。この研究で観測された中で最もエネルギーの高かった銀河核極限突発現象は「Gaia18cdj」と名付けられ、そのエネルギーは最も強力な既知の超新星の25倍にも達しました。典型的な超新星が放出するエネルギーは、太陽が100億年の寿命の中で放出する総エネルギーとほぼ同じですが、銀河核極限突発現象ではそれを上回る太陽100個分に相当するエネルギーが放出されているといいます。

ヒンクル氏は当初、星系の中心から放たれる長時間の閃光を体系的に探索する中で、銀河核極限突発現象を発見しました。彼は欧州宇宙機関(ESA)のガイア宇宙望遠鏡のデータから、2016年と2018年に観測された2回の異常な閃光を見つけました。

「ガイア宇宙望遠鏡は、物理的なメカニズムまでは教えてくれません。明るさが変化したということしかわからないのです」とヒンクル氏は説明します。そこで研究チームは、この閃光の原因を突き止めるため、数年にわたり後続調査を行いました。

一方、アメリカ・カリフォルニア州にあるツビッキー掃天観測は2020年に、同様の特徴を持つ第3の現象を発見しました。研究チームはケック天文台のアーカイブデータを用いてこの新たな天体を分析し、ガイアが観測した2つの銀河核極限突発現象と類似していることを突き止めました。これにより、銀河核極限突発現象が全く新しい種類の極端な天体物理現象であることが強く裏付けられました。

ハワイ大学天文学研究所のベンジャミン・シャッピー准教授はこう語ります。「銀河核極限突発現象は、遠方の星系に存在する超大質量ブラックホールを研究するための貴重な新しい手段となります。非常に明るいため、宇宙の彼方からでも観測が可能です。天文学において、遠方を観測することは、過去を観測することを意味するのです」

彼はまた、長期間持続するこのような閃光を観察することで、宇宙の「正午」と呼ばれる時期――つまり現在の宇宙年齢の半分ほどの時代に、ブラックホールがどのように成長したのかについて、より深く理解できると述べています。当時は、星系が活発に星を形成し、超大質量ブラックホールに現在の10倍の速度で物質を供給していたとされています。

銀河核極限突発現象現象は非常に稀で、その発生頻度は超新星よりも多くとも1,000万分の1とされており、検出は極めて困難です。そのため、宇宙の監視を続ける天文学者たちの地道な努力が必要です。

ヒンクル氏は最後にこう締めくくっています。
「これらの銀河核極限突発現象現象は、大質量恒星の劇的な最期を示すだけでなく、宇宙最大のブラックホールがどのように形成されるのかを解き明かす手がかりとなります」

この研究成果は、2025年6月4日付の学術誌『サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)』に掲載されました。

陳俊村