「エリス」新しいCOVID変異株について知っておくべきこと

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、現在広がっている新しいCOVID-19の変異株エリス」は、アメリカで主流の株となっています。この変異株は世界中で報告されていますが、健康専門家によれば、公衆衛生へのリスクは低く、以前のオミクロン系統と比べて異なる症状やより重い症状を引き起こすという証拠はありません。

 

重要なポイント

エリスはオミクロン系統の亜系統であり、EG.5としても知られ、2023年2月には確認されていました。

8月23日時点で、エリスは50か国以上で確認されており、アメリカの全症例の約20.6%を占めています。

同時に、FL.1.5.1がアメリカで2番目に多い株となっており、13%以上の症例を占めています。

エリスは、アメリカの全症例の約20.6%を占めています。参考、米国疾病予防管理センター(CDC)

 

8月9日、世界保健機関(WHO)はエリスを「注目すべき変異株」(PDF)として指定しました。これは、エリスが感染力や毒性、ワクチン回避能力を高める可能性がある遺伝的特性を持っていることを意味します。

WHOは、7月初旬のCOVID-19感染拡大を受けて、エリスを「監視中の変異株」として最初に指定しました。

現在の「注目すべき変異株」リストには、他にもオミクロン系統の「XBB.1.5」や「XBB.1.16」が含まれています。

もしエリスが「懸念される変異株」に格上げされた場合、政府は病院でのマスク着用義務や検査、物理的距離の確保など、予防措置を強化する必要があります。

エリスがCOVID-19の規制を再び強化するきっかけとなる可能性があるとの懸念も高まっています。

 

他の変異株と比べてどれほど危険なのか?

エリスは、オミクロン変異株のXBB.1.9.2の子孫です。

エリスは、スパイクタンパク質に「F456L」と呼ばれるアミノ酸変異を持っています。この変異は、以前の変異株による免疫を回避し、新しい変異株が急速に広がるのを助ける可能性があるとされています。

CDCによると、エリスが他のオミクロン系統よりも重症化しやすいという証拠はなく、類似した症状を引き起こすようです。

エリスによる症状は、以前のCOVID-19ウイルス株や風邪に似ており、以下のようなものがあります。

  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • 胸の痛み
  • 頭痛
  • のどの痛み
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 発熱や寒気
  • 吐き気や嘔吐
  • 下痢
  • 味覚や嗅覚の喪失

 

新世代の「監視中の変異株」

保健当局は、BA.2.86という高変異株も追跡しており、一部では「ピロラ」とも呼ばれています。この変異株は、3大陸でのCOVID-19検査で確認され、科学者たちを驚かせました。

この変異株が注目されているのは、2021年後半にオミクロン株が世界的に急速に広まった初期段階を思い出させるためです。当時、南アフリカの研究者たちは、急速に広がる系統を発見し、世界中に広がりました。

ミシガン大学アン・アーバー校のウイルス学者で感染症医師のアダム・ローレン氏は、BA.2.86に感染した1人の患者を自らの研究室で確認した後、Nature誌のインタビューで「再び、少しデジャヴ(初めて経験することなのに親しみや懐かしさを感じること)のような感覚を覚える」と語っています。

BA.2.86は、デンマークで7月24日に初めて確認され、その後、イギリス、アメリカ、イスラエルでも発見されています。

特に、デンマーク国内で確認された3つの感染例は、異なる地域で発生しており、これらの感染例が互いに関連していないことがわかっています。この地理的な広がりが、BA.2.86への関心をさらに高めています。

「すでにこの変異株がかなり広がっている可能性があります」と、シアトルのフレッド・ハッチンソンがんセンターのウイルス進化生物学者ジェシー・ブルーム氏はNature誌に語っています。「かなりの数の感染が発生しているに違いありません」

英国健康安全保障庁(UKHSA)によると、最近報告された感染者には、最近の渡航歴がないことから、「英国国内で一定のコミュニティ感染が進行している可能性がある」としています。

ただし、専門家たちは、BA.2.86がオミクロン株ほどの影響を与えるとは考えていません。過去のCOVID-19感染波やワクチン接種による対応策が整っているためです。「オミクロン株のような感染爆発になるとは思いませんが、まだ初期段階です」とローレン氏はNature誌のインタビューで述べています。

 

現在のワクチン

ファイザー、モデルナ、ノババックスは、エリスに類似したオミクロン亜系統であるXBB.1.5を標的とした新しいワクチンを開発しています。そのため、保健当局はこれらのワクチンが新しい変異株にも効果を発揮することを期待しています。

しかし、WHOによると、エリスが持つF456L変異は、XBB.1.5の中和抗体の多くに対して効果を低下させることが示されています。

WHOにより「懸念される変異株」として分類されたXBB.1.5は、以前は数か月間にわたりアメリカで主要な感染株でしたが、7月にXBB.1.16(アークトゥルス)にその座を譲りました。

新任のCDCディレクターであるマンディ・コーエン博士は、これらのワクチンが薬局などの一般的な場所で入手可能になると予想しており、今後はCOVID-19ワクチンを年に1度の定期接種として導入することを見込んでいます。

 

(翻訳編集 華山律)

オーストラリアのシドニーに拠点を置き、健康と科学に関するニュースを担当するレポーター。