死海西岸のクムラン洞窟で羊皮紙巻物が発見されました。それは古代ヘブライ文字で記されており、発見当初はたった100ドルの価値しかありませんでした。ところが、考古学者や学者の研究を通じ、その内容は古代ヘブライ時代にさかのぼることが分かったから大変なのです。
ヘブライ大学考古学のエレアザル・スケーニク教授が買い取った3巻の巻物には、旧約聖書の預言書の中でも最重要の『イザヤ書』の断片が確認されました。それは、紀元前7世紀のユダヤの預言者イザヤが残したものとされ、イエス・キリストの誕生と受難についても預言として言及されています。また、この書はユダヤ民族の「飛散と復国」についても預言していました。
さらには、他の2つの巻物はどれも2000年も前のもので、ユダヤ人が流浪生活を始めた時点のものです。そして、残りの4巻の巻物は紆余曲折を経て、1954年にスケーニク教授の息子イガエル・ヤディンが米国から買い戻しました。宝物には霊性があり、自ら持ち主を見つけると言われている所以です。
死海文書
これらの7巻の経典と、その後クムラン洞窟で発見された他の巻物は、「死海文書」と総称され、世界中の学者による長年の調査の結果、972の写本が発見されました。その中には、『エステル記』を除く旧約聖書のすべての経書、正典には含まれていないが、非正典に分類されている経書が多数含まれており、また、そこで暮らしていた人々の生活を記録した文書もありました。
鑑定結果によると、これらの経典は紀元前250年~紀元68年の間、当時、山の洞窟近くに住んでいたユダヤ教エッセネ派の修道士たちによって書き写されたものだとされています。
これらの羊皮紙が特別な防腐処理を受けた証拠はありません。なぜ、これらの経典が2000年以上の時を経ても完全に保存され、風化せず、インクの色さえ褪せないのかは、今でも謎のままです。
終末の戦い
現在、死海文書のほとんどは、エルサレムのイスラエル博物館にある聖書館(死海写本館)に収蔵されています。
その中で、『戦いの書』は光の子と闇の子の間で繰り広げられた終末の戦いを描いています。ただし、聖書にはこの話は記載されていません。
『戦いの書』では、光の子は大天使ミカエルに率いられ、白亜麻布のローブを着た司祭たちが前線で補佐し、ラッパを吹いて軍隊を指揮し、悪魔ベリアルが率いる闇の子キティムの軍隊と戦ったと、詳しく書かれています。この戦争は40年以上も続き、7回の大戦が行われました。
最初の6回は光と闇の引き分けで、互角の戦いとなりました。最終戦では、神の力がベリアルとその軍隊を打ち倒し、光の側が最終的な勝利を収めました。そして、すべての闇がかき消され、光の子たちは永遠の平和の中で生活することができるようになったのです。
経典の中で、何度かメシア(救い主)について言及しているため、この戦争は「メシアの戦い」とも呼ばれています。
エノク書聖書から外された、なぜ?
しかし、死海文書の価値は、イスラエルの国宝というだけではありません。考古学界と神学界にとっても第一級の資料となっています。その理由の一つは、現代の『聖書』の誤記や脱字を、死海文書と比較して訂正できるからです。
『聖書』は何千年も前から伝えられているため、元の古代語ヘブライ語から同時代に近いアラム語、その後のギリシャ語、ラテン語、英語、その他さまざまな言語に翻訳・転写される過程で、意図的・非意図的にどれだけの言葉が変更されたかは分からないからです。
それだけに、現在の『聖書』には矛盾や不一致なところが少なくありません。無神論者はしばしばこれを利用して、『聖書』で語られているそれらの物語は、真実ではないと、『聖書』自体も信用できないと糾弾してきました。よって、死海文書の登場により、根本的に、その根源を推察できる、『聖書』を訂正するための素晴らしい資料を手に入れたことになります。
それだけでなく、死海文書には、現在「外典」や「偽典」とされて教会が推奨していない経典がかなり含まれています。特に「偽典」は、旧約聖書の正典・外典に含まれないユダヤ教・キリスト教の文書であるため、内容の真偽がはっきりせず、奇怪であったり、教義や組織にそぐわないとして排除されてきました。しかし、それらが死海文書の中から大量に現れたのです。
これらの内容は、もともとは正典の中にあったはずなので、それは元来適切だったはずです。それなのに、なぜ後になって教会から批判されるようになり、正典から外され、偽書とされたのでしょうか? 教会も時代に合わせて、教義や組織を変えなければならなかったということなのでしょうか?
神の言葉は昔から変わらないと言われていますが、地上にいる神の代理人は、必要に応じていつでも教えを変えることができるということでしょうか? それを許してしまうと、組織は拡大するかも知れませんが、神と人との真実の関係は成り立たなくなるのではありませんか?
不思議なことに、この『エノク書』、4世紀までは教会でも正典として扱われ、新約聖書の多くの本に引用されていました。ただ、その後、どういうわけか、教会から偽書扱いされてしまったのです。
この書の中で最も有名なのは、やはり、世界の終焉についての記述です。そこには、すべての罪人が地獄に投げ込まれ、永遠の刑罰を受け、善良な人は復活して永遠の命を手に入れると書かれています。そして、最後の時、メシアが再び降臨し、彼の王国と新エルサレム城が建設されると預言されています。
エノクから始まる「未来」は、10の異なる週に分けられ、第2週はノアの時代で、その後にアブラハム、モーセと続きます。10週目には新しい天と地が現れるとされています。さて、我々が生きる現代は、10週目なのでしょうか?
詳しくはEPOCH TVをご覧ください。
https://www.epochtimes.jp/2023/05/153512.html
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