児童の性的人身売買に光を当てる『サウンド・オブ・フリーダム』がクラファンで上映 ハリウッド作品を凌ぐ  

エンジェル・スタジオの『サウンド・オブ・フリーダム』、5年前に製作は終了し、ディズニーの棚に埃をかぶったまま放置されていた作品だが、このほど8500万ドル(約117億6600万円)の興行収入を記録し、この夏のスリーパーヒットとなった。

7月4日に公開されたこのインディーズ大作は、わずか1450万ドル(約20億1300万円)の予算で製作され、現在公開中のフランチャイズ映画であるトム・クルーズの『ミッション・インポッシブル-死闘編-』やハリソン・フォードの『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』よりも上映館数が少なかった。

クラウドファンディングで製作されたこのインディーズ映画の興行収入は、更に2470万ドル(約35億3300万円)伸びた。Box Office Mojoによれば、16日にはチケットの売れ行きが急伸し、1日で前週の27%以上の売り上げを記録した。

「この夏、映画全体の興行成績が振るわない中、私たちの小さなインディペンデント(独立系)映画は週を追うごとに成長を続けている。何百万人ものファンやサポーターに後押しされ、『サウンド・オブ・フリーダム』は全国的な、そしてやがて国際的な変革のムーブメントとなった」と、エンジェル・スタジオのグローバル配給担当上級副社長ジャレッド・ギーシー氏は声明で述べた。

メディアが攻撃する中、観客は重いテーマを望む

ジム・カヴィーゼル主演のこの映画は、児童の性的人身売買という難しいテーマを扱っている。通常アクション大作や爆笑コメディがめじろ押しの夏の映画シーズンに、重いテーマである児童の性的人身売買を観客に深く考えさせることに成功したようであり、これは批評家やアナリストにとって特に興味深い点として注目されている。

同様に注目すべきは、この映画が観客に届けられるまでにたどった道のり。

エンジェル・スタジオは、2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーに買収される前に20世紀フォックスが映画化権を持っていたため、クラウドファンディングで500万ドル(約6億5千万円)を調達して配給したが、その後、ディズニーはこの映画を棚上げにした。

映画の製作は2018年に終了していたが、プロデューサーであるエドゥアルド・ヴェラステギ氏は、最終的に今年公開する権利を取り戻すことに成功した。

カヴィーゼル氏は、映画終了後のスクリーン上の特別メッセージの中で、この映画は「想像できるあらゆる障害が邪魔をして、現在まで公開されていなかった」と述べた。

例えば、ローリング・ストーン誌のライターのマイル・クレー氏は、「『サウンド・オブ・フリーダム』は脳ミソの弱いオヤジのためのスーパーヒーロー映画」と題する論説を書いた。

その中でクレー氏は、カヴィーゼル氏を「陰謀論者の右派の著名人であり、演説やインタビューでは、愛国者と子供の血を搾取する邪悪な軍団との地下聖戦をほのめかしている 」と評している。

しかし、メディアによる情報操作の中、この映画はイーロン・マスク氏や、ジュエルやメル・ギブソン氏のような有名人からも支持を集めている。

誰もが投資家になれるクラウドファンディングモデル

人気映画の配給スタジオ/ビデオ・オン・デマンド・サービスを手がけるエンジェル・スタジオは、ハリウッドのスタジオシステム全体に逆らった。同社は、株式クラウドファンディングを利用し、個人投資家に同社とその作品の株式を購入する機会を提供することで、オリジナル作品の製作資金を調達している。

エンジェル・スタジオが制作したコンテンツは、同社のストリーミング・サービスで無料配信される。一部のタイトルは他のサードパーティのストリーミングサービスで配信契約を通じて利用可能。

『サウンド・オブ・フリーダム』を映画館で公開するために7千人が500万ドル(約6億5千万円)を投資したと述べ、ギーシー氏はエポックタイムズに、「私たちが制作するすべてのショーや映画には、その背後にコミュニティの側面がある。エンジェル・スタジオのコンテンツに携わると、それを支えているのは多くの人々だということがわかるだろう」と語った。

ギーシー氏は特許技術を用いた「先を見越した支払い」をスタジオの特徴として挙げ、これが成功を後押しする大きなエンジンの一部だと強調した。提供されたQRコードを通じて、視聴者は他の人に映画を観てもらうためにお金を払うように招待される。

同氏は投資家のコミュニティを「エンジェル・ギルド」と名付け、それを「世界中にいる10万人の投資家たち」と表現した。少数の幹部がメディア・プラットフォームで何を流すかを決めるハリウッドのスタジオ・モデルとは異なり、これらの投資家がコンテンツを選ぶのだ。

「経営陣がコンテンツを承認することはできない。私たちが決定する方法は、人々がどのようなコンテンツを望んでいるかを尋ねることだ」とギーシー氏は語った。

エンジェル・ギルドは 『サウンド・オブ・フリーダム 』を選定した。

エンジェル・スタジオは今年初め、信仰に基づいたインディーズ映画『His Only Son』を公開し、黒字を記録したと伝えられている。同社のTVシリーズ、イエスの生涯と伝道を描いた歴史的キリスト教ドラマ『選ばれし者たち(The Chosen)』は、現存するクラウドファンディングで最も成功したTVシリーズの1つと言われている。

12月公開予定のディストピアSFドラマ『The Shift』など、さらなる映画の公開も予定されている。

人々の善意や道徳観を高める原則

ギーシー氏は、コンテンツの選択は次の2つの質問に基づいたと語った。

1、このコンテンツは善良で、気高く、価値観を励ますものか?

2、このコンテンツがエンジェル・スタジオに来なかったら、我々はどれほど失望するだろうか?

同氏は「私たちは最高のコンテンツ・クリエーターを招待する」と述べた。

また、エンジェル・スタジオ背後のモデルが、コンテンツの成功を従来のスタジオモデルとは全く異なるものにするという点に言及した。

「視聴者がいるかどうかを見極めるという点では、ハリウッドのオープニング・ウィークエンドとは全く違う。我々としては、自分の投資によってこの映画を創り出し、世に送り出した人々のコミュニティを見守り、共に祝うつもりだ」