疲れたなあ、と溜息をつきながら、「でも残りの仕事がまだあって、明日に持ち越すことはできない。なんとしても今夜中に終わらせなければ」と、もはや悲壮の覚悟で残業に突入。
そんなケースは、よくあることかもしれません。
そのような時に、たとえ効果が一時的とは知っていながらも「元気が出る1本」を飲んで、まずは気合を入れよう、と思いがちです。
飲みたいお気持ちはよく分かります。
しかし、これは健康のために良い選択とは言えません。
これから体に無理をさせる前提で、勢いづけに飲むものと言えば、たとえ何であれ「健康的」とは言えないからです。
いわゆるエナジードリンク(energy drink)という種類の飲料は、世界各地で販売されています。実際に疲労回復をうたうような栄養が含まれている飲料もあれば、気分的な改善効果をねらっただけの清涼飲料という位置づけのものもあり、内容はさまざまです。
なかには、体に良いとされる生薬や、合法的な範囲での興奮成分などが含まれているものもあります。
それらは共通してエナジードリンクと銘打ってあるため、消費者に「飲んだら力が出る」を実感させるためか、どの製品にも一定量のカフェインや糖分が含まれています。
販売する側は、スポーツドリンクや栄養ドリンクとともに、エナジードリンクを「機能性飲料」に分類しています。しかし、それは発汗で失われたミネラルや水分を補給する用途だけでなく、先述したような「特殊用途(体に無理をさせる前に飲む)」に使われることが多いので、服用には細心の注意が必要なのです。
1つの事実として、こうしたエナジードリンクを飲むと、間もなくして血圧が上がります。
欧州の栄養学専門誌『European Journal of Nutrition』で2014年に発表されたクロスオーバー比較試験によると、世界のエナジードリンクのなかで最も高い市場シェアをもつある銘柄のエナジードリンクは、飲用後、被験者の血圧が明らかに上昇しました。
さらに、最も衝撃的だったのは、このエナジードリンクを飲んだ被験者の脳の血流速度が急激に低下していたことです。
健康飲料として体への利点をうたうエナジードリンクですが、同研究では、エナジードリンクについて「心臓への負荷が増加するだけでなく、脳の血流速度を低下させるという意味で潜在的な危険がある」と結論づけています。
さて、エナジードリンクに関する本稿の結論としては、この飲料を否定するまでには至りませんが、「飲み過ぎは健康に良くないので、十分注意してください」ということに尽きると思います。
特に、高血圧や心臓に持病のある人には、お薦めできない飲料であることは言えるでしょう。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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