毎日いろいろな果物を食べることによって得られる健康効果は、その栄養成分によって異なると考えられています。雑誌『Circulation』に掲載されたハーバード大学の調査では、1日に5皿(果物2皿、野菜3皿)の青果物を食べると、健康に大きな効果があると報告されています。ここでは、その栄養価の高さが際立つ5つのフルーツをご紹介します。
5.ブドウ
ブドウには多くの抗酸化物質が含まれていますが、その中でも赤ブドウの皮と種に含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールは、抗炎症作用や抗酸化作用があり、心臓病のリスクを下げたり、がんの予防に役立つと言われています。
オーストラリア癌評議会は、レスベラトロールの抗癌作用についての回答として、実験室や動物実験において、レスベラトロールは潜在的な発癌物質の生成を防ぎ、標的器官や組織への発癌物質の作用を阻止し、細胞に作用して癌の発生を抑制したり、アポトーシスを誘導するなどの効果が示されていると述べています。
レスベラトロールに加え、ケルセチン、ケンフェロール、カテキン、エピカテキン、アントシアニンなど、ブドウに含まれる他の植物化学物質は、がんとの闘いにおいて相乗効果を発揮すると考えられています。 学術誌『Molecular Nutrition and Food Research』に掲載された論文によると、ブドウの成分の多くは、単独または他の成分と組み合わせて、がんに対して「相加的相乗効果」を発揮するようです。
さらに、ブドウに含まれる栄養素は、心臓の健康にも有効です。ブドウに含まれるケルセチンとレスベラトロールは動脈硬化のリスクを低減し、カリウムは血圧を安定させ、食物繊維は血圧を下げるだけでなく、体内の「悪玉」コレステロールの量を減らすと言われています。
ブドウは2型糖尿病の人に良いとされています。 『Journal of Biochemistry and Biophysics』誌の研究によると、レスベラトロールは血糖値のコントロールを改善し、インスリン抵抗性を低下させることができるそうです。ハーバード・メディカル・スクールによると、1食分(120g)あたりのブドウのグリセミック指数は25、グリセミック負荷は3と、低い範囲に収まっています。ただし、ブドウには主にブドウ糖と果糖が含まれており、この2つの糖質は100gあたり7.59gなので、食べ過ぎないようにすることが大切です。
米国糖尿病学会は、糖尿病患者には、全体の炭水化物摂取量が一定であれば、穀物や乳製品などの炭水化物食品の代替として果物を推奨しています。中くらいの大きさのブドウ15粒には約15gの炭水化物が含まれています。
ブドウには、網膜の損傷を軽減する抗酸化物質のルテインとゼアキサンチンが含まれており、目にも良いとされています。ブドウに含まれるレスベラトロールは、加齢黄斑変性症、緑内障、白内障を予防する効果があります。
またブドウには抗酸化作用や抗炎症作用を持つポリフェノールが含まれており、脳の酸化ストレスを軽減し、脳への血流を促進し、記憶を高める化学物質を維持する働きがあると言われています。
『Experimental Gerontology』誌に掲載された研究では、ブドウの粉末(ブドウ 2¼カップに相当)を毎日6ヶ月間摂取することで、アルツハイマー病に関連する脳の領域における代謝の著しい低下が防止されたことが示されています。
果物によって含まれる栄養素は異なるため、さまざまな果物を食事に取り入れることで、体にさまざまな効果をもたらすことができます。アメリカ心臓協会では、成人は1日に4〜5皿(1皿あたり約1カップ)の果物を摂取することを推奨しています。
例えば、ブドウの皮と種には、ブドウの果肉には含まれない抗酸化物質、レスベラトロールが含まれており、リンゴの皮には果肉よりも多くのポリフェノールと繊維、ミネラル、ビタミンが含まれています。また、ブルーベリーの黒い皮には抗酸化物質が豊富に含まれています。
また、果汁を飲むよりも、果物は丸ごと食べる方が、食物繊維やビタミンなどの栄養素が豊富に含まれているため、健康的であるといえます。果汁だけを飲むと、血糖値の変動が激しくなり、すぐに空腹を感じてしまうので、体重管理や血糖値のコントロールには不向きです。
(翻訳・井田千景)
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