善を行い徳を積み、善を行い災いを絶つ

宋の時代、建康の江寧県庁の裏に、王公という旅館を営んでいる男がいました。彼は様を信じ敬い、人を欺かず、貧しい人や困っている人々をよく助けていました。

癸卯の年、旧暦2月15日の夕方、店員が店を閉めようとすると、朱色の服を着た数人の武将たちが、いくつもの荷車や馬、そして、何人かの従卒を連れてやってきて、「早く扉を開けてくれ、ここで馬を休ませたい(自分たちも休みたいという意味)」と声をあげました。

店員は急いで王公にこのことを知らせ、王公は「早く中に入れなさい」と言いながら表に出たところ、武将たちはすでに店の中に入り、座って待っていました。

王公は恭しく、酒と料理を持って武将たちをもてなし、従卒たちの食べ物も用意しました。暫くすると、従卒たちは長いロープと、何百もの太い杭を持ち、ある武将の前に行き、「包囲のご許可を」と言うと、その武将はうなずきました。

すると従卒たちは外に出て、地面に杭を打ち込み、ロープでつなぎ、街全体を囲み始めました。すべて終えると、従卒たちは再びその武将の前にやってきて、「この店も含み、全ての建物を包囲しました」と言いました。

武将たちは「ここの王公は、生涯、人を欺いたことがなく、正直で人に親切にしてきた、この店だけは神も大目に見るだろう」と言い、何人かの武将たちは、「この店を赦さなければ、我々の公正な道理や正義が見られないから、この店を除いてもよかろう」などと賛成しました。このことを聞いた従卒たちは、杭を打ち直しはじめ、この旅館は包囲から外されました。

一人の武将は王公に「これは我々の恩返しだ」と言い、その後、他の武将たちも従卒たちも荷車も馬も一瞬にして消え去ったのです。そして、外の地面に打ち付けられた杭も囲っていたロープも消え、これには、王公も店員も驚愕しました。

その時、ちょうど、深夜の巡回をしている役人たちが、この旅館がまだ明かりをつけているのを見て、部下たちを連れて、どうしたのかと尋ねに来ました。王公は先ほどの出来事を素直に話しましたが、役人たちは誰1人信じず、妖言惑衆だとして、王公を逮捕し、牢獄に閉じ込めてしまいました。

その2日後、建康で大火事が起こりました。先日、従卒たちが縄を張った部分も全て焼け焦げて被害に遭いました。しかし、王公の店だけは無事で、あたり一面の建物が全て焼失したのです。そして、王公もようやく釈放されました。

人の運命や禍福には因果応報が存在しており、その人の行いに応じてそれぞれの結果が決まります。善行をし、常に人に親切にしてこそ、自分のために徳を積み重ね、良き報いが得られます。

神々は我々の考えや言動の一つ一つを見ており、自然の法則に順じてこそ、天からの加護が得られ、たとえ、危機に直面していても、神々に守ってもらえるのです。

 

(翻訳・金水静)