【大紀元日本8月23日】国内の文学賞としては最も権威あるものとして知られる「第139回芥川賞・直木賞」の授賞贈呈式が22日夕、都内・丸の内の東京会館で行われ、芥川賞は「時の滲む朝(文学界6月号)」で在留中国人女性の楊逸(ヤン・イー)さん(44)、直木賞は「切羽へ(新潮社)」で井上荒野さん(47)にそれぞれ贈呈された。賞金は100万円。
贈呈式の席上で、楊さんは受賞の喜びを「寒暑二度、文心一途」と中国風に表現、「人生で出会ったすべての方、人生でさせられたすべての苦労に感謝します…そして私を温かく包んでくれた日本、この小さな島国の大きな心に心を込めて感謝します」と述べ、詰めかけた文壇関係者、出版関係者らから万雷の拍手を受けた。
国内文壇で73年の歴史を誇る芥川賞で、日本語以外を母国語とする外国人が同賞を受賞するのは初めてで、早くも関係者からは「日本文壇の開国、中国ウェーブの到来」の声が挙がっている。これまでも芥川賞を受賞した外国人として、李恢成(イ・フェソン)さん=1972年=、故・李良枝(イ・ヤンジ)さん=89年=、柳美里(ユ・ミリ)さん=97年=、玄月(ヒョン・ウォル)さん=2000年=ら4人がいたが、いずれも在日の韓国人で日本語が事実上の母国語であった。
楊逸さんは1964年、中国のハルビンで出生し、87年に来日。お茶の水女子大学で地理を専攻して卒業した後、在日中国人向けの新聞社に記者として勤務、現在は中国語教師という経歴だ。2007年、「ワンちゃん」で文学界新人賞を受賞してから、芥川賞にノミネートされ異色の存在として注目されるようになった。
受賞作の「時が滲む朝」は、中国語が母国語の楊さんが日本語で書いた小説で、「…1988年にあこがれの名門大学に進学したふたりの青年・梁浩遠と謝志強が、大学のキャンパス内で「愛国」「民主化」「米国」について討論するようになり、ついに天安門広場での民主化運動に行き着くが、人民解放軍の戦車によって無慈悲に蹂躙されて挫折、大学を追われて来日する」というストーリーだ。
現在、中国国内では党中央の方針によって天安門事件に触れることは事実上の禁忌であるため、国営通信社の中国新聞社や中国共産党系の環球時報などは、楊さんの芥川賞受賞作品「時が滲む朝」について、「中国の農村から異国に渡った男性の、10年余りの生活体験と感情の遍歴を描写(中国新聞社)」、「農村生まれで日本に渡った中国人男性と他の中国人が、十数年にわたる生活で体験した理想と現実の落差を描いた(環球時報)」と低調に紹介し、64天安門事件のくだりについては言及しなかった。
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