【大紀元日本11月1日】11月の花札は通称「雨札」。柳に雨の風情が心なしかリリカルです。20点札は小野道風が番傘を差し、柳に飛びつくカエルを眺めています。10点札は柳にツバメの図柄。5点札は赤短冊。カス札は図柄が何ともミステリー・・・、花札中で一番の謎札です。
小野道風(894-967)は平安時代の書家です。いわゆる三蹟の一人として、有名になりました。何事も諦めずに努力をすれば達成できると、カエルの姿から教訓を得て書道の達人となったのです。伝説の書家・道風の出世に、名もないカエルと雨が一役買っています。
この図柄で注目すべきは番傘です。天からのインスピレーション=雷神の雨を受け止めるアンテナが、「番傘」なのです。日本の図像学の伝統の隠し味が、こんなところにも活かされています。11月の花札が「雨」と呼ばれる理由です。ジョーカー札である訳も、ここにあります。
10点札にあるツバメは春を告げる鳥です。そのツバメが11月の花札になっています。柳も季節的には変です。枝垂れ柳は春の風情だからです。ここに雷神のジョーカーぶりが発揮されていると、みなすこともできるでしょう。ジョーカーはどこに出没してもいいのですから・・・。
さて問題は「赤と黒」に塗り分けられた、衝立のような雨のカス札です。雷神のほとばしる稲光=赤を受け止めて、世界軸のように永久運動する車輪が描かれています。雷神は黒雲を呼んで世界を循環させる水を統御します。全ての物質に浸透する生命の水です。これがジョーカー=雨札の正体です。赤と黒は陰陽のパターンであること、申すまでもありません。
(洸)
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