【大紀元日本5月12日】人間は素晴しい能力を持っている。悪人も善人もそうでない人も潜在能力を開花させる鍵は、精神エネルギーを使う技術に習熟することである。それがすなわち、スタンドを成長させ操る能力なのである。精神エネルギーを心眼に映じるように物質化させ、それをスタンドとして自在に操る能力を持った登場人物たちが、荒木ワールドではストーリーの常連として跳梁跋扈する。
スタンドとは文字通り、守護霊のように人の傍らに立つモノ(形象化された実体)のことである。身の安全を守護し相手を攻撃する精神エネルギーが、本人の中から護法童子のように映像化されたキャラクターとして出現する。荒木飛呂彦ワールドでは、この超能力化した精神エネルギーの分身キャラクターを、スタンド・バイ・ミーという歌からの着想で、スタンドという命名がなされた。
何らかの契機を媒介にして、ある日突然にスタンド能力を身に付けると、キャラクターの立ち姿のポーズや視線の煌きが一変する。スタンドを心で見る事ができる才能を開花させた者が、「スタンド使い」と呼ばれる魂のソールジャーなのである。作者が繰り出す八百万(やおよろず)のアイデアの中から、限りなく創出されるスタンド能力のヴァラエティーの豊かさは、読者を魅力的に吸引して一驚させてきた。
主人公の一人ジャイロ・ツエペリは「スティール・ボール(鉄球)」と命名されたスタンドを使う。ささいな間違いで死刑に処せられることになった一人の少年を救済するためだけに、『スティール・ボール・ラン』という過酷な冒険レースに身を投じた。それはとりもなおさず、自分の人生の意義や「何かを」納得したいがためでもあったのだが・・・。
それはさておき、1890年9月25日午前10時、太平洋『サンディエゴ』のビーチをスタートし、ゴールを『ニューヨーク』とする人類史上初の乗馬による北米大陸横断レースが始まった。総距離6,000キロ。優勝者には賞金5千万ドル(60億円)が支払われる。 優勝目当てに、あるいは不気味な別の企みを抱いて参加した謎のテロリストたちが、多種多様なスタンド攻撃を仕掛けて、主人公たちをしばしば絶体絶命の窮地に陥れる。
謎が迷路のように、深まる真の謎を呼ぶスタンドの追撃をかわしつつ、次々にどんでん返しの危機を渾身の勇気とすばやい機転で潜り抜け、主人公たちは恐るべき陰謀の罠を解明しながら、ゴールを目指してただひたすらに疾走する。そして『スティール・ボール・ラン』レースという競技名目の、眼くらましのベールに覆われた真の敵の隠された目的が、巻を追うごとに明らかになる。
主催者を背後で操るボスの最強スタンドは、一体どんな種類の超越的能力を駆使して、主人公たちを翻弄するために待ち伏せしているのか? それを打ち破るスタンド能力を精神の格闘の中から、どのように開花させるのか? 失敗が許されない生命を賭した冒険の中でしか、人間の運命の潜在能力は決して目覚めることはない。
スタンドという能力を媒介にした精神エネルギーの芸術的な散華と激突を、格別に魅力的な人生の冒険と人間性の成長物語にした才能こそが、荒木飛呂彦ワールドの真骨頂であり、類い稀な醍醐味のまったく新しい輝きの出現なのである。
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