古代中国の物語

赤子を救った書生 

昔、浙江省寧波市に袁道済(えん どうさい)という書生がいた。彼は非常に貧しく、科挙の試験が行われる都へ行くこともままならなかったので、親戚や友人たちが彼のために旅費を工面してやった。

都へ行く途中、袁は道端に捨てられている赤ん坊に気づいた。そのまま通り過ぎることはできず、近くの豆腐屋の夫婦に所持金を渡して赤ん坊を託した。

一文もなくなった彼は仕方なく寺に寄り、なんとか一晩だけ泊めてもらうことになった。その晩、寺の和尚はあるを見た。各府の城隍神(じょうこうしん。中国の民間信仰における土地の守護神)が一堂に会し、書生たちの名簿を文昌帝君(学問の神様)に見せながら、何だかんだと話し合っている。

寧波の城隍神は、「袁道済は赤ん坊の命を救った心根の優しい男です。必ず合格させるべきでしょう」と言った。しかし、文昌帝君は袁をひ弱で貧相だと思い、難色を示した。城隍神は「髭をつければ良くなるのでは」と提案した。

翌日、和尚は自分が見た不思議な夢を袁に話そうと部屋に向かった。すると、長い髭を蓄えた袁が出てきた。和尚は驚き、自分の夢を袁に伝えた。後に袁は都で科挙に合格し、運勢が好転したという。

「北東園筆録続編」より

(翻訳編集・李青)