千葉県印旛市で毎年春に開催されるエコ・スローマラソンは、今年2016年の4月3日(日)で6回目を迎える 。参加者がマイペースでゆっくりと走り、ゴミを拾い、お互いに励まし合うマラソン大会で、利益は2011年の東北地方太平洋沖地震の犠牲者に寄付される。
大会準備でお忙しい主催者の西一(はじめ)さんにお話を伺った。
— マラソンとの出会いについてお伺いできますか。
以前は一生懸命働きお金を稼ぐことが一番大切だと思っていました。でも、1988年に38歳で妻を亡くしてから何かが欠けてしまいました。1990年夏、カリフォルニア州の ビッグ・サー (Big Sur)にあるエサレン研究所(Esalen Institute)で心身を統合して自己を発見するセミナーに参加し、その年の12月、一念発起して、トレーニングなしでホノルルマラソン42.195キロを完走したことがマラソンとの出会いでした。
息も苦しく、足も痛くなりましたが、やめようとは思いませんでした。ホノルルという都市の魅力もあるし、楽しいし、一歩一歩確実に距離が減っていくわけだから、これはゴールできるぞと思い始めて、歩いていたけれど最後は走って、ランナーとしてゴールしました。これは僕にとって人生で初めて味わう比べようのない達成感でした。
そのあと、どれだけ速ければ満足するだろうかと自問しました。でも、それは楽しいことではない。それより世界の国々を知りたいと思い、ゆっくりと走ることにしたんです。
同時に、ゆっくり走ることで脳みそが最も活発になることにも気づきました。健康法の一つです。
— これまで何回マラソン大会に参加されたのですか。
41歳から始めて67 歳の現在、685の大会に参加しました。Slow is Beautiful(遅いことはすばらしい)をモットーに、最後のランナーになることを目指して走っています。これまでの「最悪の最短時間」は3時間45分で「最高の最長時間」は11時間32分です。
時間のために走ると、来週は誰かが自分より一秒早く走るかもしれません。 時間の奴隷になり、絶対に勝つということはありません。ゆっくり走ることで常に勝てるわけです。
— 最後のランナーになる上での苦労は?
世界でもっとも遅いランナーという肩書きがある以上、あまり速く走らない。その方が自分にとって調子がいいから。でも、大会関係者にはもうしわけないです。ボランティアの方たちに「ありがとう」を連発します。 すると心から感謝の気持ちが湧いてきます。 普通の時間で走ってラストにならない人には理解できないと思います。自分はずっとこういう気持ちを味わってきているので、主催者側に立つときは、最後のランナーが気持ちよくゴールできる体制をできる限り用意するように心がけています。
社会でもっとも弱い人たち、身体障害者とか貧困の人たちが、尊厳を持って生きていける社会が、文化が成熟した社会だと思うんです。金持ちが1%で99%が貧しい人という社会とは異なります。
自分が主催する大会は、こうあればいいなという世界にしたいと思っています。競争でなく協労、いわゆる協力ですね。速さを競うのではなく、その人がもっている優しさとか、人間のいい部分を、競い合って人に接していく世界。年に一度でもそのような文化をめざす世界が実現するのであれば、この大会をずっと主催することでいくら経費がかかって労力がかかっても、こんなに素晴らしいことはないと思っているんです。
自分ひとりで思い込んでいるんじゃなくて、世界の人が賛同してくれて、どんなものか分からないのに航空券を買って来てくれるわけだから、可能な限り楽しんでもらいたいという気持ちになります。
(文:鶴田ゆかり)
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第6回 ECO SLOW MARATHON INBA エコ・スローマラソン印旛
開催日:2016年04月03日(日)開催
申込締切: 2016年04月02日(土)
ホームページ:http://ecoinba.blogspot.co.uk/
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