NYの新興大麻ビジネス、ちぐはぐな規制で大混乱

2019/04/16 更新: 2019/04/16

[ニューヨーク 9日] – 大麻(マリフアナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)を使ったお茶やチョコレートの製造・販売に、ニューヨーク州当局がゴーサインを出したのは昨年12月中旬だ。

CBDには、大麻特有の「ハイ」な効用状態を引き起こさず不安やその他の症状を和らげる効果があるとされる。

だがその後、ニューヨーク市の保健査察担当者が、ファットキャット・キッチンなど地元のカフェやレストランから数千ドル相当のCBD入り食品や飲料を押収。販売中止しなければ、罰則を科すと警告した。ほんの数週間前、連邦法により全米でCBDが明文的に合法化されたばかりだった。

ニューヨーク市による取り締まりは、CBDを巡る連邦、州、自治体の規制に一貫性が欠けている実態を浮き彫りにしている。ニューヨークなどの州で、こうした食用品を扱う店舗数は多くはないが増えており、こうした状況に困惑している。

「法に従おうとしているが、法が何を認め、何を禁止しているのか完全に把握している人は誰もいないようだ」。ファットキャット・キッチンのオーナーであるC・J・ホルム氏はそう語る。同店はCBD入りのコーヒーやクッキーを扱っていることを店頭で宣伝している。

CBD入りのチンキ剤や塗り薬、食品に対する消費者の関心は、近年の段階的なマリファナ合法化とともに拡大している。医療用または嗜好(しこう)品としての大麻使用は33の州で合法化されているが、連邦政府は依然として禁止したままだ。

米国の消費者は昨年、CBD入りの食品や飲料を3億ドル(約330億円)程度購入したと、コーエン・ワシントン・リサーチ・グループは推計している。飲料大手コカ・コーラ<KO.N>などの食品大手も、この分野に関心を示している。

昨年12月施行の改正農業法は、精神活性化合物であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が少ない「ヘンプ」と呼ばれる大麻から抽出されるCBDを合法化することで、その法的位置づけを明確にする意図も込められていた。

だが同法は、CBD入りの食品・飲料販売を検討していた業者にとり、新たな混乱の種となった。一部の業者は、ある一連の規制を、別の規制に違反せず遵守することが不可能となった。

例えば、ニューヨークでは、州の農業局が昨年12月、「CBD茶」や「CBDを振りかけたチョコレート」などの関連食品について、通常の食品より厳しい基準が設けられる「食品サプリメント」して販売する限り合法とするガイダンスを出した。

その一方で同局は、こうした販売行為が、CBDをサプリメントとして食品に加えたり販売することを違法とする連邦政府の食品医薬品局(FDA)ルールに反する可能性があると警告した。これは、FDAが昨年初めて、CBDを有効成分とする医薬品を認可したためだ。

ニューヨーク市保健局は、FDAルールを深刻に受け止めた。

ファットキャット・キッチンでは2月、市の保健査察担当者がCBDの粉や蜂蜜、菓子やクッキー生地を差し押さえ、オーナーのホルム氏を驚かせた。市内にある他の4つの店でも、同様の光景が繰り広げられた。

それから間もなく、ホルム氏や他のレストラン経営者は、市当局から7月1日以降、保健担当者が押収を再開するとの手紙を受け取った。

州当局の合法判断にもかかわらず、市の保健当局がカフェやレストランにサプリメントとしてのCBD入り食品販売を認めるかは不明だ。

市当局の広報担当者は、CBD入り食品・飲料の販売を禁止するFDA方針を踏襲するとの立場を繰り返した。FDAの広報担当者は、ニューヨークにおける規制についてコメントしなかった。

コロラドやメーンなどの州では、CBDの食品添加を認める法律を成立させることで、こうした食品の位置づけを明確にしようと試みている。

FDAは、医薬品として登録したCBDを規制の例外扱いとすることで、食品添加物や食品サプリメントしても認める可能性に言及しており、5月末にメリーランド州で公開ヒヤリングを行う予定だ。

こうした相反する規制と場当たり的な取り締まりを受け、ホルム氏などのCBD取り扱い業者は、少なくとも法を順守する姿勢を示しつつ、販売を続ける方策を編み出している。

ニューヨークのスタテン島で蜂蜜にCBDを混ぜた製品を手掛けるイゴール・ヤコブレフ氏は、瓶のラベルにFDAからの「評価や承認」を受けていないとする注意書きを加えた。

ホルム氏は弁護士と相談の上、FDAが禁止しているのはCBD添加食品を「複数の州をまたいで取引」することだとの解釈から、ニューヨーク州内で生産・製造されたものである限り、CBD抽出物入りコーヒーを販売しても差し支えない、との立場を取っている。

「弁護士3人に相談すれば3通りの答えが返ってくるので、紛らわしい」──。そう語るのは、ニューヨーク州で大麻生産者や加工業者の業界団体を設立したコートランドの農業経営者アラン・ガンデルマン氏だ。「だから、政府がちゃんとした対応を取るまでは、消費者が本当に求めている製品づくりにまい進し、突き進むのみだ」

Jonathan Allen(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

 

4月9日、大麻(マリフアナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)を使ったお茶やチョコレートの製造・販売に、ニューヨーク州当局がゴーサインを出したのは昨年12月中旬だ。ニューヨークのクイーンズ地区にある、CBD食品を取り扱うカフェのサイン。3月撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

 

 

4月9日、大麻(マリフアナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)を使ったお茶やチョコレートの製造・販売に、ニューヨーク州当局がゴーサインを出したのは昨年12月中旬だ。ニューヨークのクイーンズ地区にある、CBD食品を取り扱うカフェのサイン。3月撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)

 

Reuters
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