ファーウェイ幹部が発言、フィリピンに3年内に中国式監視システムを導入

2018/12/05 更新: 2018/12/05

中国通信機器大手のファーウェイの幹部は最近、フィリピンで開かれた商業フォーラムで、人工知能つき監視カメラのシステムをマニラで3年内に導入する用意があると述べた。同国ネットメディア・ラップラーが12月2日に報じた。

中国国内で、ファーウェイが提供する、顔や所有車両から個人を認識するAI監視カメラは、都市部の街中や公共施設に設置されている。人工知能を備え、個人を認識し、当局が準備を進める個人の信用格付け制度に関連する。ファーウェイ創業者の任正非CEOは元中国軍幹部で、同社が中国共産党と強いつながりがあるとされる。

「犯罪防止」を売り文句に輸出される中国式監視システム

ラップラーによると、ファーウェイ幹部は監視技術について「犯罪抑制につながる」と強調し、「国家の安全保障にとって重要だ」と説明する。例えば、北京に多数のAIカメラが設置されているため、3時間以内に誘拐された3歳児を救出できたと付け加えた。

ファーウェイは「犯罪防止」を名目に個人の言動監視を正当化している。たとえば、中国資本の浸透が広がるケニアでは「安全都市」を銘打って首都ナイロビに1800台のAI監視カメラを設置した。公式発表で「犯罪検挙率を著しく引き上げ、犯罪率を低下させた」と主張する。

加えて、マニラへAI監視機能と密接に関連する個人信用格付け制度の導入も示唆した。「あなたが銀行窓口に行けば、事務側は何の書類が不足しているかをすぐに認識できる。監視カメラはあなたの顔から個人を認証している」「書類を取りに地方政府事務に行けば、あなたが必要な書類をすでに窓口は把握している」

ファーウェイ公式ページによると、マニラの先進商業区ボニファシオ・グローバルシティ(BGC)には2014年からファーウェイの監視カメラネットワークが導入されている。

中国政府は、自国民の行動を最新のAI技術を搭載した監視カメラで行動をとらえ、オンライン上の発言も検閲している。共産党は宗教弾圧や人権擁護派を徹底して弾圧している。法治を超え当局都合で罪の有無が判定されているとして、西側諸国は共産党政権の中国を「デジタル権威主義」とたとえ、批判している。

国際人権組織フリーダム・ハウスは11月1日に「インターネットの自由度ランキング2018」を発表した。世界65国を対象にネット環境の自由度を調査したところ、中国共産党式の検閲と監視モデルが世界に広がり、デジタル権威主義が深化していると指摘した。

フリーダム・ハウス代表マイケル・アブラモウィッツ氏は、「中国は検閲と監視モデルを海外に輸出しており、国内外の情報を管理している。このためデジタル世代の民主主義は苦しめられている」と報告している。

機密の訓練施設に100万人が収容されていると報じられる新疆ウイグル自治区では、住民の監視のためにAI監視カメラがいたるところに設置され、ささいな言動でウイグル族が拘束されている。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは11月22日付で、米国政府はサイバー安全保障上の危険性があるとして、ファーウェイの通信機器を避けるよう同盟国や友好国の説得を試みていると報じた。

ニュージーランド最大の通信事業スパーク社は11月28日、国家通信保安局(GCSB)の警告を受け入れて、次世代通信規格5Gの構築にあたり、中国情報技術大手ファーウェイ機器は除外すると発表した。豪州も今夏に同様の決定をしている。

英秘密情報部のアレックス・ヤンガー長官は12月3日、セントアンドリュース大学での講演で、豪州やニュージーランドの例を挙げて、英国も国家安全保障上の懸念から、ファーウェイの参入を排除するべきだと発言した。

(編集・佐渡道世)